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自治体の皆さまへ

立ち直りを支援する保護司の活動で 誰もが、住みやすい地域に

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北海道江別市

「保護司」は法務大臣から委嘱されたボランティアで、犯罪や非行をした人の立ち直りを支援しています。
全国に約4万7千人おり、市内では40人の保護司が活動しています。
保護司という言葉を聞いたことがあっても、身近な地域にいることを知らない方が多いのではないでしょうか。
今回の特集では、実際にどんなことをしているかなど、江別地区保護司会の方々に話を伺いました。

◆江別地区保護司会 会長 洞野 博文(どうの ひろふみ)さん(保護司歴24年)
◇どんな活動をしていますか
保護司は、罪を犯してしまった人の社会復帰をお手伝いしています。これを「保護観察」と言い、刑務所から仮釈放、少年院から仮退院した人や、保護観察の処分を受けた人などが対象となります。具体的には、対象者と月に2、3回の面接をし、相談に乗ったり、約束事を守るように指導したりしています。
また、対象者が仮釈放・仮退院する前に、本人が帰宅を希望する家の引き受け人と面会し、調整を図る「環境調整」という活動もしています。
各地域には、専門知識を持つ国家公務員の「保護観察官」が割り当てられており、保護観察官が、担当する保護司を指名します。保護観察官は保護司に助言したり、直接対象者を担当したりすることもあり、保護観察官と保護司が役割を分担しながら協働して指導・支援を行っています。

◇どんな対象者がいますか
現在、市内にいる保護観察の対象者は10人以下で、環境調整は15件程度です。江別市は多くの学生が暮らすまちで、他の地域と比べると、若い対象者が多いかもしれません。
犯罪の内容は、窃盗や万引き、暴行、薬物、性犯罪などで、最近は振り込め詐欺の受け子で捕まる人が増えています。
詐欺罪で捕まった人は、悪いことをした認識がなかったり、本人もだまされていたりする場合があります。
保護司の活動は、加害者を支援することであるため、市民の方から理解されないこともあります。しかし、対象者の社会復帰を支援することは、再犯を防ぎ、被害者をこれ以上増やさないことにつながるので、地域のためになっていると言えるのではないでしょうか。

◇どんな人が活動していますか
市内の保護司の平均年齢は、他の地域と比べて若く、60歳くらいです。保護司の職業は、会社員、お寺の住職などの宗教家、農家、主婦などさまざまです。保護司はみな、ボランティアで活動をしています。

◇保護司会の課題はありますか
江別地区保護司会の定員は42名で、現在は40名の保護司が在籍しています。大幅に不足しているわけではありませんが、高齢化も進んでおり、保護観察以外に啓発活動なども行っているため、人数が増えると安心です。保護司になるためには、資格は不要ですが、地域の人望がある方で、保護司法に定める条件を満たし、各選考委員会にて推薦される必要があります。
他には、犯罪や非行をした人の自立や社会復帰に協力することを目的に彼らを雇用してくれる「協力雇用主」も増やしたいです。対象者の更生を進めるのに大切なのは、規則正しい生活をすることです。仕事があると、生活リズムが整うだけでなく、周りの人との交流も広がり、社会に適合しやすくなります。

◆生きにくいと感じている人の力になりたい
江別地区保護司会 事務局長 長岡 慶一郎(ながおか けいいちろう)さん(保護司歴8年)
私は保護司をしていた方と仕事の関係で知り合い、その方が家庭の事情で保護司を辞めなければいけなくなった時に頼まれ、保護司になりました。保護司の活動の説明を受けた時に「自分の勉強にもなる」と言われました。自分の知識や見えている世界はきっと、まだまだ狭いと感じ、知らない世界を見てみたいという前向きな感情を持つようになり、保護司になることを決めました。
実際に保護司として活動をしてみると、自分が想像もしなかったような人生を送っていた人と出会います。私は、子どもの頃から家があって、家に帰るとご飯を食べられる環境でしたが、そうでない人もいるのだと実感しました。対象者の中には、さまざまなことが人並みにできなくて、生きにくいと感じている人がたくさんいます。自分が特別優れているわけではありませんが、少しでも力になりたいと思い、保護司をしています。
「罪を憎んで人を憎まず」と言うことわざがあります。罪を犯した人が自分と同じ地域に住んでいてほしくないと思うのは自然なことです。しかし、江別市から追い出せば別の地域に行き、別の地域から江別市に来ることもあります。私は対象者と面談をする時に「あなたの罪は許されるものではないけれど、あなたの味方だよ」と伝えています。罪を憎んでも、罪を償った人を憎まないでほしいです。

◆罪を償った人を排除しないでほしい
江別地区保護司会 齊藤 順子(さいとう じゅんこ)さん(保護司歴17年)
私はカウンセリングを学び、これまで、中学校の相談員や市の家庭児童相談員などをしていました。30年ほど前、一人暮らしの高齢者に電話をかけるボランティアをしていた時に、保護司会の事務局の手伝いをしてほしいと頼まれて、10年間、事務局の会計をしました。その後、保護司となり活動しています。
子どもと関わる仕事をしていたので、対象者の家庭環境に目を向けることが多いです。生まれ育ちの環境に恵まれず、悪い人に出会ったなどの不運が重なって犯罪者になってしまった対象者が数多くいます。そういった人に、一人でも温かい手を差し伸べてくれる人がいれば、犯罪者になることはなかったのではと思ってしまうことがあります。
市民の皆さんが「罪を償ったからといって、すぐには信用できない」「できれば関わりたくない」と思ってしまうのは、仕方のないことだと思います。寄り添うとか、支えるとか、そこまでしなくてもいいので、排除だけはしないでほしいというのが私の願いです。罪を犯してしまった人が、罪を償って、再スタートを切ろうとしているのに排除されてしまうと、疎外感から再犯につながってしまうことがあります。罪を償った人を排除しないまちになることが、犯罪のない平和なまちへの第一歩となるのではないでしょうか。

◆更生保護サポートセンターにご相談を
更生保護サポートセンターは、保護観察が終了した対象者が気軽に相談したり、保護司同士で悩みを共有したり、市民の皆さんが家族や知り合いの困り事を相談したりできる場所です。
開設時間:
月・金曜日…9:00~15:00
水曜日…12:00~15:00
※年末年始、祝日・大型連休を除く
場所:総合社会福祉センター内(錦町14-87)

問い合わせ:【電話】382-1177

◆社会を明るくする運動を知っていますか
「社会を明るくする運動」は、犯罪や非行のない、安全で安心な地域社会を築くための全国的な運動です。
江別地区保護司会では、街頭や市内イベントでグッズを配るなどの啓発活動、講演会、作文コンテスト、学校へのポスター掲示などに取り組んでいます。

詳細:健康福祉部管理課
【電話】381-1090

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