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特集 あなたらしく、笑顔あふれる毎日に―認知症とともに生きる―(2)

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北海道江別市

◆Interview.1 ―認知症とともに― 楽しんで歌声を届ける
認知症は高齢者だけがかかる病気ではありません。51歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された横山弥生さんと夫の横山光紀さんにお話を伺います。

認知症当事者:横山 弥生(やよい)さん
弥生さんの夫:横山 光紀(みつのり)さん

◇弥生さんが認知症だと気付いたのはいつ頃ですか
弥生:3年ほど前、認知症と診断されました。もともと、まちづくりに関わる仕事をしていたのですが、うつ病になってしまい、体調を崩して会社を退職しました。療養した後、夫が経営する会社の手伝いを始めたのですが、ある時、重要な商談を忘れるという、大きなミスを犯してしまったのです。
光紀:その頃、今までなかったようなミスをしたり、強い口調で相手を非難したりすることがありました。
もしかしたら、うつ病が完治していないのではないかと思い、個人の特性などを分析する検査をしてもらった結果、認知症の人と似た傾向が見受けられました。その後、病院で認知症と診断されました。

◇認知症と診断されてから生活の中で変化はありましたか
弥生:認知症になってから料理など複数のことを同時にしなければならないことが苦手になりましたが、掃除など一つのことに集中して取り組めるものは得意なままで、今もしています。
認知症と診断されて間もない頃は、「できない」ことへの抵抗がすごくありましたが、今は少し考え方が変わって「できないことは素直に言う」ことが大事だと気付きました。
光紀:認知症になったからといって、生活が大きく変わることはありません。どんな人にも苦手な事はあるので、その苦手な事をお互いに補い合っていければいいと思います。二人とも苦手な事は「一緒に頑張ろうね」と言っています。

◇認知症と診断された時、どう思いましたか
弥生:最初は「なるほど、そういうことだったんだ」と自分の症状に対しての疑問が晴れ、納得しましたが、「この先の人生どうなってしまうんだろう」という不安が襲ってきました。「仕事がしたいのに働けなくなるのかな」「孫が生まれたら、娘や息子の母親として育児の手伝いもしたいのにできないのかな」などと、マイナス思考になっていました。
光紀:私も、認知症であるという診断には納得しましたが、先々の不安をとても感じていました。
認知症について調べたり、何か治る方法はないかと医師に相談したりもしましたが、認知症は進行すると治らない病気だという事実を再認識するばかりでした。
そこで、今何をすべきか考えました。病気を治す方法を考えるのではなく、この病気とともに生きていくことを決心しました。
妻は、認知症と診断されてひどく落ち込んでいましたが、落ち込んでいても病気は治りません。前向きに過ごせるよう、私は妻に「何をしている時が一番楽しい?」と聞いてみました。すると「歌っている時が一番楽しい」と言われたので、「よし、ライブを開催しよう!」と提案しました。
妻が診断された「アルツハイマー型認知症」は、感情の記憶は残るといわれています。一度きりの人生、楽しい記憶をたくさん作ってもらおうと思いました。
また、認知症の進行は、高齢者よりも若い人の方が早いといわれています。妻の認知症がどれくらいの速度で進行するのか見当がつかなかったので、漠然とした不安がありました。そのため、やりたいと思うことをやるには早い方が良いと思いました。
弥生:はじめ「ライブをするよ」と言われた時はびっくりしました。10代の頃に歌のコンテストで受賞した経験はありましたが、また人前で歌を披露するなんて思ってもいませんでした。
初めてライブを開催したのは診断を受けてから数カ月経った頃でした。ライブには昔からの知り合いも来てくれて、とても楽しく充実した時間を過ごせています。今も1~2カ月に1回のペースで市内のライブバーなどを中心にライブを開催しています。ライブの様子はYouTubeにアップロードしているのでぜひ見て欲しいです。

◇今後の目標はありますか
弥生:とても大きな目標ですが、歌手の大貫妙子(おおぬきたえこ)さんの大ファンなので、何か一緒にイベントができたらいいな、と思っています。
歌うことが好きで、大きな目標を実現したいという前向きな気持ちが、この活動を続ける原動力になっています。

◇認知症と診断されて悩んでいる方へ何と声をかけたいですか
弥生:「お互い楽しいことを見つけられればいいですね」と声をかけたいです。日常生活でつらいと感じることは多いと思います。そういうことは、当事者同士だと分かり合えることがあるので、認知症の人が集まる会などで「こんなことあったんだ」「そういうことあるよね!」と自分の失敗などをみんなで笑い話にできるとうれしいです。前向きになれれば、少しずつ人生の過ごし方も変わっていくと思います。
光紀:家族や大切な人が認知症と診断され、悩んでいる人には、まず「家族や友人に話した?」と聞くと思います。認知症の方を一人で支えるのは大変です。認知症の人を支えるうえで、誰か手伝ってくれる人がいることはとても重要だと感じています。私は妻が認知症と診断されてからいろいろな人に話を聞いてもらいました。そうすると理解を示してくれる方も多く、助けてもらえることが増えました。周りの人に話してよかったと思います。
ただ、いろいろな言葉をかけてもらいましたが、「いつか良くなる」「俺もよく忘れるから大丈夫」といった言葉はつらかったです。認知症と物忘れは違います。それよりも、そばで話を聞いてくれる方がうれしいです。
力になってくれる人が身近にいるだけで、気持ちは楽になります。また、認知症の人自身も、自分が認知症であることを知っている方が多いと、不安が和らいでのびのびと暮らせるような気がします。
その次はきっと、認知症の人に「何をしている時が一番楽しい?」と聞くと思います。

詳細:介護保険課
【電話】381-1067

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