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男女共同参画コラム

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北海道浦幌町

■連載152
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

季節は晩秋から初冬へと移り変わり、いよいよ長い冬とのお付き合いが始まります。健康管理の上からも、くれぐれも寒さ対策は入念にしなければなりませんね。
新入社員が働いていく上で大切にしたいこととして、上位3項目(複数回答)を挙げるならば、「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」48・5パーセント、「周囲との良好な関係を築くこと」43・2パーセント、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」43・0パーセント、という調査結果があります(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2023」(2023年6月))。他方、同調査によれば、新入社員が仕事・職場生活をする上での不安要因として、「仕事についていけるか」が61・5パーセントで第1位であり、「同僚とうまくやっていけるか」34・4パーセント、「上司とうまくやっていけるか」22・2パーセントを大きく引き離しています。
あくまでも私の独断と偏見ですが、現在の学校教育で実践されているキャリア教育の効果には、私はいささか懐疑的です。(1)基礎学力を有していること、(2)生活習慣が身についていること、(3)社会常識が備わっていること、これら3点の条件を満たしているならば、組織の中で働く基盤は整っていると、私は断言します。その理由は、それらはすべて日常の学校生活で養われるからです。言い換えれば、学習活動と課外活動の両立に向けて熱心に取り組むことが、仕事力の基盤づくりに直結しているからです。
基礎学力の例として、日本語の文章力を取り上げて説明したいと思います。部下の文章で上司がストレスを感じる原因上位3位(複数回答)は、「読み手が必要とする情報が欠けている・説明不足」65・1パーセント、「適切な語彙・表現を選んでいない」46・5パーセント、「文に無駄が多く長い」38・9パーセントです(公益財団法人日本漢字能力検定協会「漢検意識調査」(2022年3月22日発表))。一定の漢語を活用して論理的かつ明快な文章を書く力は、なかなか職業社会では向上させることは難しいでしょう。ナレッジ(知識)とボキャブラリー(語彙)を生かして、スキル(技術)を駆使して文章を作り上げていくことは、教育機関での積み上げ学習の一つです。文章力は読解力とともに、基礎学力の重要な要素でることは自明の理。
さらに語彙に焦点を当てるならば、情報機器の普及で受けると思う影響(複数回答)として、「手で字を書くことが減る」89・4パーセント、「漢字を手で正確に書く力が衰える」89・0パーセントが圧倒的に高い割合を示しています(文化庁「令和3年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」(2022年9月30日))。誤字・脱字は、文章を台無しにしてしまいます。
漢語と和語で構成されている日本語を正しく読んで、書いて、話すことは、社会生活あるいは職業生活を営む上での基本です。もちろんキャリアデザイン、キャリアアンカー、キャリアマインド、キァリアチェンジなどが氾濫しているキャリア教育も否定しません。
また、時代の潮流にあっては、早期英語教育や主権者教育なども必要でしょう。しかしながら、テレワークが導入されたり、メールでのやり取りが日常となっていたりしている職業社会を視野に入れた学校教育を念頭に置くならば、正しく活用できる日本語、正しく応用できる日本語の教育こそ、これまで以上に重視されなくてはならないと、私は考えます。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

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