文字サイズ
自治体の皆さまへ

男女共同参画コラム

33/49

北海道浦幌町

■連載154
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

年が明けてほぼ1ヶ月が過ぎようとしています。人それぞれでしょうが、今年立てた目標達成に向けて、他者と比べることなく自分の歩幅で1歩ずつ進みたいものです。
仕事においては、とかく主体性が重要であると言われてきました。指示待ちの受け身ではなく、自ら考えて自ら動くという意味での造語「考動」も、よく聞くようになりました。
以前にも紹介した、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」では、3つの力を挙げています。それらは、(1)前に踏み出す力(アクション)、(2)考え抜く力(シンキング)、(3)チームで働く力(チームワーク)でした。前に踏み出す力はさらに、主体性、働きかけ力、実行力の3つの能力要素から構成されています。主体性を最初に挙げている点が特徴です。
それほどまでに主体性が強調されている背景としては、主体性に乏しい新人さんが比較的多いという解釈が成り立つとも言えるのではないでしょうか。新入社員に対して実施した調査によれば(複数回答)、「社会人基礎力において仕事上特に重要と考える能力要素」として、「主体性」は、新人社員59・1パーセント、企業72・0パーセントで、両者とも首位を占めました(東京商工会議所人材・能力開発部「2023年度新入社員意識調査集計結果」(2023年4月))。
主体性を「物事に進んで取り組む力」と広義に解釈するならば、学校社会では「学びに進んで取り組む力」と定義できるでしょう。キャリア教育を学校社会から職業社会への架け橋、いわゆるブリッジ教育であると私は考えています。そうであるならば、学校において学びの主体性を養うことは、仕事の基盤の一つを創り上げていくことでもあります。
ですが、言うは易し、行なうは難し。一例を挙げましょう。2022年に経済協力開発機構(OECD)が実施した「国際学習到達度調査(PISA)」によれば、「自分でオンラインの学習リソースを探す」ことに「とても自信がある」「自信がある」と回答した日本の高校生の割合は計32・6パーセントであり、OECD平均(72・7パーセント)の半分以下でした(「読売新聞」2023年12月20日付記事)。日本の高校生は一般的に、控えめに回答する傾向が見られるものの、やはり自主性言い換えれば主体性を養うことが、教育の課題の一つであると言えましょう。
さらにもう一例紹介したいと思います。社会人基礎力において高校生が考える「将来必要とされる能力」と「現在持っている能力」を比較したならば(複数回答)、「主体性」は「将来必要とされる能力」としては55・2パーセントで首位でありながら、「自分が現在持っている能力」では24・8パーセントであり、最も乖離度が大きいのです(一般社団法人全国高等学校PTA連合会・株式会社リクルート合同調査「第10回高校生と保護者の進路に関する意識調査2021年報告書」(2022年2月))。高校生自身も主体性の大切さを認識しているようです。
「教え込む教育」あるいは「詰め込む教育」を一概に否定するつもりは毛頭有りません。
けれども、「何のために学ぶのか」という明確な目的を的確に生徒あるいは学生に提示して、説得的に説明して納得させなければ、本人には主体性が生まれてこないと、私は思います。
それゆえ、教員と生徒・学生とのコミュニケーションが不可欠であり、それは上司と新入社員とのコミュニケーションと相通ずるところがあります。主体性の原点は納得性かと。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU