■連載155
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝
寒さと雪ももう暫くの辛抱ですね。北海道にとっては、雪は観光資源ともなりますが、その一方で生活障害でもあります。「表もあれば裏もある」とは、まさに言いえて妙ですね。
さて、Z世代という言葉が人口に膾炙してきました。Z世代は元々、米国発の世代分類を示す「ジェネレーションZ」に由来します。Z世代を明確に定義することは出来ません。一般的には、1990年代後半から2010年代初期に生まれた世代を指すでしょう。デジタルネイティブ世代、あるいはポストミレニアム世代とも呼ばれています。
何事も一括りにしたり、カテゴリー化したりすることは、決して正しいことではありません。県民性などは典型的な事例です。一人ひとり個性があって、性格や気質が異なることは当然です。けれども、おおまかに地域性や地域風土として特徴づけられるものは見て取れます。私事で恐縮ですが、稚内もその土地柄を表す独特の風土を、私は感じています。
Z世代も同様に、もちろん彼ら彼女ら一人ひとり個性があります。一個人が安易に世代論を語ることは、あらぬ誤解を生んでしまう危険性があります。ですが、ここでは、私なりにZ世代の職業人と接してきた個人的体験から、Z世代の価値観・人生観・仕事観を大雑把に紹介したいと思います。あくまでも私見であることをお断りさせていただきます。
まず、プライベートの優先度が極めて高いです。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を当然視しています。コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスに関する意識が高い。それゆえ、非生産的な会議や非効率的な業務負担を避けたがります。とりわけサービス残業は忌み嫌われます。「とにかく聞きなさい」「とりあえずやってくれ」という上司からの一方的な指示では、面従腹背でしょう。やはり「何のために」「なぜ、こうするのか」を明確に伝える必要があります。いつも言うことですが、Z世代には共感的理解をもたせ、納得させていくことが求められます。手間が掛かることを覚悟しなければ。
また、勤務時間外に長時間拘束されるような行事(たとえば飲み会)は嫌います。SNSに熟達しているZ世代ゆえ、フラットな横ネットワークにはなれているものの、理不尽なタテ社会の関係にはなかなか馴染めないかもしれません。ですから、上司や先輩が酒席で得々と語る武勇伝や自慢話などは聞きたくもないでしょう。とは言え、早く一人前に育ちたいという成長意欲は強く、職場を離れた場所においても、仕事に役立つ助言や方法論には耳を傾けると思います。そのときに注意しなければならないことは、決して押し付けないことです。「一つの参考にしてもらいたい」という控えめな気持ちで話すことが大切だと思います。飲みにケーションでは、フラットなコミュニケーションを心がけるべきです。
私が最も苦労していることは接触頻度を高めて、Z世代が普段どのようなことを考えて仕事をしているかを把握することです。「報告・相談・連絡」(ホウレンソウ)の中で最も欠けるのは相談です。たとえば、退職に行き着くまでの悩みや迷いを話しに来ることなく、退職する結論だけを持ってきます。上司は観察力を研ぎ澄ませて、目配り・気配りが重要。
人材不足の昨今、Z世代の職場定着率を高める努力は並大抵ではありませんね。
▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。
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