■連載157
仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝
ようやく北海道も桜を迎える時節となりました。これからは花の季節が始まります。
さて、4月入社・入職の社会人1年目の方々にとっては、少し疲れが出てきているかもしれませんね。ゴールデンウィークを心待ちにされていることでしょう。この間、どの企業・団体も、おそらく新人研修を実施されています。その定番がビジネスマナー研修でしょう。
東京商工会議所の調査によれば、「社会人1年目の新入社員が入社時点までに身につけて欲しいスキル・知識」として、「ビジネスマナー(身だしなみ、挨拶、敬語、態度、席次等)」が72・9パーセントで、圧倒的に第1位でした。ちなみに第2位から第5位を紹介するならば、「パソコン」58・2パーセント、「電話応対」38・0パーセント、「経済社会に関する一般的な知識」34・4パーセント、「Eメール文」の作成33・3パーセントでした(東京商工会議所「研修・教育訓練等に関する調査集計結果」(2023年4月))。当然のこととは言え、如何に企業がビジネスマナーを極めて重視しているかは、注目に値します。言い換えれば、新社会人はマナーを知らない、あるいは身についていないという解釈が成り立つと、私は考えます。あくまでも私見ながら、マナー教育は学校だけの責任ではなく、家庭教育の一つとしても大切な部分でしょうが、現実は?かと。
それでは、新人さんは、ビジネスマナーをどのように捉えているのでしょうか。1つの調査結果を紹介しましょう。社会人歴新卒1~2年目(n=223)が持つビジネスマナーのイメージとしては、「堅苦しい・古い」26・0パーセント、「複雑・難しい」18・4パーセント、「面倒臭い」13・5パーセントが上位3位までを占めました。他方、「必要不可欠」6・7パーセント、「基本常識」6・3パーセント、「社会人として必要・基本」5・8パーセントと、低い数値でした。ビジネスマナーを実践する際のマイナスイメージが強く出たような印象を受けます。ところが、社会人歴3年以上での上位3位までを見ると、「必要不可欠」21・3パーセント、「基本常識」17・0パーセント、「社会人として必要・基本」12・5パーセントであり、高い数値を示しています(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「社会人のマナーに関する調査」(2024年3月))。両世代間のイメージギャップは歴然です。
新人さんがビジネスマナーを知らなければ、あるいは身についていなければ、当然のことながら、上司や先輩は教えていかなければなりません。見てみぬ振りをすることは論外。ただし、その教え方が難しくなりつつあると、私は思います。新人さんに直して欲しい点があったならば、「いつ、どこで、どのように」指摘して、指導するかは悩ましいことです。要するに、耐性が弱いと言われる新人さん指導のTPOを考えることが求められます。
人材育成に際しては叱ることよりも褒めることの方が重要であると、一般的に言われています。その点を踏まえて指導する必要があるでしょう。感情に任せて面前で叱責することは、離職する方向に向かわせるマイナスインパクトになる危険性があります。対話の場面を設定して、理由や根拠を示しながら丁寧に話をしつつ、相手を共感的に理解させたうえで納得させる過程が必要不可欠です。立ち振る舞いにおいて共通の「型」に基づくことが周囲に好印象を与える効用は、褒められるための前提条件とも言えるのでは。
▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。
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