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【特集】わたしたちの「普通」は、誰かにとっての『特別』だった。(5)

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北海道清水町

■まちに起きているプラスの効果
しみず認定こども園の寺岡園長は、保育園留学は「受け入れ側のメリットの方が大きい」と話します。
清水町やしみずっ子たちに、今どのようなプラスの効果が起こり始めているのかを、こども園の先生や保護者みなさんなどにお聞きしてきました。

・しみず認定こども園保育士 阪口 知世乃さん
・しみず認定こども園保育士 小林 和奏さん

阪口:こども園の園児たちには「この日からこういうお友達が来るよ」と事前に名前を伝えていて、わくわく感を持てるようにしています。事前に伝えておくと、保育園留学の子が来たときに「あ!なになにくん!」と声をかけてくれる子もいます。

小林:私も事前に伝えるようにしていて、4歳児だと質問ができるので、「どうやって来たの?好きな食べ物はなに?」と、お互いを知る時間をつくっています。

阪口:今年から保育園留学の受け入れクラスを担当しているのですが、子どもたちの思いやりが育まれているなと感じます。「初めて来る子だからきっと緊張しているよね」ということがわかっていて、だからこそ、優しく声をかけたり、生活の手順を教えてあげたり、3歳児なりに考えながら行動してくれています。それは、保育園留学の子が来てくれたからこそ、見えた成長だと思います。

小林:「リードしてあげよう、手伝ってあげよう」という気持ちがすごく見られて、こども園の先輩になろうとしています。お別れのときの寂しい気持ちも味わって、出会いもあれば別れもあることを知れる良い機会になっています。

阪口:いろいろな気持ちを経験することで、間違いなく、園児たちの成長につながっていて、より心が豊かになっているなと思います。

小林:保育園留学に来た保護者の方からは、「町の人のあたたかみを感じた」と、よくお聞きします。そういった話を聞いて、わたしもより人のあたたかみを感じたり、紹介したい場所やグルメが増えたり、すごく誇れる町だなと思うようになりました。わたしは中学生まで清水町にいたのですが、この町に戻りたいと思った理由とあらためて結びつくものがありましたね。

阪口:保護者の方に、こども園の良さを伝えていただく機会が本当に多くて、自分たちがこんなに良い環境で保育ができているのだと気づかされます。清水町で保育ができる良さや、こども園の良さを存分に生かして、町の良いところをもっともっと子どもたちに伝えていきたいなと思うきっかけになりました。

■保育園留学は保育の質を高める一因
しみず認定こども園 園長
寺岡 淳子さん

園児だけでなく、園全体にとってのメリットがたくさんあると感じたのが、保育園留学に期待した部分です。園の先生たちは、もともと向上心が高く、「もっと良い保育を」という志を持って、園児一人ひとりに丁寧に寄り添っています。そこに、保育園留学に来た方から保育の評価を受けることで、ここにいたら当たり前になっているものの良さを見直したり、改善につながったりと、先生たちが目指す保育に近付けるのかなと思いました。もし、評価が良ければ「自分たちの保育が間違いじゃなかった」と、自信や励みにもなりますしね。
園児たちも、保育園留学の子たちに優しく思いやりを持って接していて、保育目標の「元気な子・優しい子・頑張る子」に向かってしっかり育っているのだなと再確認しました。保育園留学が、こども園の保育の質を高める一因になっていると実感しています。
「清水町は、こんなに緑が多いのですね」と、保育園留学に来た方から言っていただくのですが、お散歩に行くだけで季節の草花に出会えることが当たり前だと思っていたので、『意識せずとも自然の恵みを受けて育つのが、ここの良さ』だと、わたしも気付かせてもらいました。

■みなさんの第2のふるさとのような場所
清水町役場商工観光課 課長
前田 真さん

「清水町に住む人や暮らし」を資源にした滞在時間の長い観光を目指して、まちまるごとホテルなどに取り組んできましたが、子育て世代が来づらいという課題がありました。保育園留学は、清水町で仕事をしながら子どもを預けられるので、子育て世代のみなさんがよりスムーズに来られるようになっています。みなさん子どもに良い体験をさせたいという想いが強いので、町内の飲食店を制覇するなど、町の経済循環も高まっていると感じます。
また、保育園留学最大の特徴は『清水町のことを好きになって帰ってくれる人が多い』ところです。もともと道外にしか知り合いがいなかった方々に、清水町という第2のふるさとのような場所ができて、実際に保育園留学に来た方々が、自身の体験談として、清水町の良さを雑誌やSNSで紹介してくれています。
今後さらに社会のデジタル化が進めば、住む場所を選ばない時代になってくると思います。例えば東京都に拠点を置きながら、夏の間は清水町で生活したり、その逆もあったり。清水町が目指す観光の姿とは、豊かな自然と美しい農村の景観、それらを守り育む生産者、住民の生き方など、普段の暮らしや新たなつながりを感じる「ライフスタイルツーリズム」にあると思います。

■しみずっ子たちにとっての保育園留学
偶然にも学生時代の同級生が保育園留学に来ていて、こども園から帰った後の時間も一緒に過ごすことができました。違う環境で育った子と関わることが、娘の良い刺激になっていて、特別な経験ができているようです。
(鴨川みゆきさん・結莉亜(ゆりあ)ちゃん)

新しいお友達が来る度に楽しそうに教えてくれるので、すごく良い経験になっています。ずっと同じ仲間と育つので、新しい子との関わり方だったり、その子が好きなものに興味を持ったり、視野が広くなっているなと感じます。
(鈴木沙紀さん・結羅(ゆうら)ちゃん・麻比瑠(まひる)ちゃん・琳華(りんか)ちゃん・愛依紗(めいさ)ちゃん)

■保育園留学体験談が新たな「つながり」に
清水町に保育園留学に来た漫画家の蒼井まもるさんが「たのしい幼稚園7・8月号」と「おともだち8・9・10月号」で、自身の体験談を紹介してくれました。初めて清水町に来た人目線での出来事や、お子さんの心の動きなどが描かれています。蒼井まもるさんは、2023年講談社漫画賞を受賞した「あの子の子ども」を別冊フレンドにて連載中の漫画家さんです。

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