【今月のテーマ…高齢者の飲酒と健康筆者】
筆者:地域包括支援センター・保健師 石川修子
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
本年も皆様がお元気で過ごされることを心よりご祈念申し上げます。
さて、お正月はどのように過ごされたでしょうか。何かと飲酒の機会が増えることも多くなりますが、高齢者にとって過度の飲酒は健康寿命に関わる病気の強力なリスク因子です。昔からお酒は「百薬の長」と言われますが、反面「万病のもと」ともいわれます。
過度の飲酒は肝臓病だけでなく、脳血管疾患、転倒・骨折、認知症など、健康寿命に影響を及ぼす疾患のリスクになるのです。
◇高齢者における飲酒問題の原因
高齢者の飲酒が増える原因は様々ですが、ライフステージにおける課題が原因になることがあります。
元々、飲酒習慣があった人が退職や配偶者の死などをきっかけに問題となって現れるなどの場合です。
かつては、身体的・精神的ストレスの調整弁になり、仕事や配偶者の存在で一定量に収まっていたお酒がコントロールできず、増えてしまうことで逆に身体的・精神的ストレスを助長する存在となるのです。
◇高齢者におけるお酒との付き合い方
高齢者では、ライフスタイルの維持が大切です。社会的活動や仕事の継続など生きがいのある生活が健康寿命を延ばします。そうした中に組み入れられた飲酒(コミュニケーションの酒・お祝いの酒など)がまさに「百薬の長」となり得るのかもしれません。
筑波大学では、2023年10月にノンアルコール飲料の摂取で飲酒量が減少することを世界で初めて実証する研究成果を発表しました。
12週間ノンアルコール飲料を提供した人(介入群)と、そうでない人(対象群)の飲酒量を比較したところ、介入群では、ノンアルコール飲料の摂取量に応じて飲酒量が減少するという相関がみられ、減酒の傾向が優位に高かったのです。12週目時点の介入群の飲酒量はそれまでの飲酒量と比較して1日あたり純アルコール換算で平均11.5g減少していました。
飲酒習慣は飲み始めると歯止めが効かなくなり、適量に制限するように自分でコントロールすることが難しい場合が多くあります。過度な飲酒による健康障害がある場合、これまでは「断酒」を目指す習慣改善も多かったのですが、ノンアルコール飲料を活用した減酒の方法が実証されたことで、有効で取り組みやすい飲酒習慣の改善が可能になるかもしれません。
いきいきとしたライフスタイルこそが健康寿命の主体です。節度ある適度な飲酒を心がけましょう。
■健康カレンダー 1月
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