■知床の保全に突き付けられた「世界標準」により、大きく前進
世界自然遺産登録にあたってユネスコ世界遺産委員会は「世界遺産海域を沖合3kmに拡張」、「海域管理計画の策定やサケ科魚類の保全」、「観光管理や科学的調査」など、日本政府に対して海域や河川の保全の担保を求め、解決にあたるよう勧告しています。これを受け世界遺産管理機関となる環境省、林野庁、北海道は地元自治体との連携、専門家の助言、地域住民と関係団体の幅広い参加・協力を得て世界遺産地域の管理を進めていくこととなり、「知床世界自然遺産地域科学委員会」により様々な分野に精通した専門家からの有益な助言を得た上で、管理者だけではなく地元関係団体を含めた「地域連絡会議」で、いろいろな課題に対する対応策や方針が合意される仕組みとなっています。
この間町内では、民間事業者により、第一線で自然や野生動物、鳥類を観察する機会を創出してくれていたこともあり、遺産地域の適正利用の浸透とエコツーリズムに貢献しながら、ますます知床の自然への理解が進んできたと言えます。
■半世紀前の知床憲章の制定
国立公園の指定から10年が経過した昭和49年9月には、羅臼・斜里の両町で知床憲章を制定しました。「知床の自然環境を人間生存の基盤である」とし、「人類共有の財産として、大切に保護し、永く子孫に伝えるため、国民の願いをこめて憲章を定める」と結んでおり、この時代の両町の人々には、すでに世界自然遺産の精神に通ずる想いが宿っていたことがわかります。
▽知床憲章
知床は、自然界のしくみを最大限に見せたくれる日本唯一の原始境であります。
緑の山河と青い海は、ここで生育する動植物とともに、きわめて高い学術的価値を有しています。
この貴重な知床の自然は、祖先から受けついだ人類共有の財産として、いつまでも大切に保護されなければなりません。
ここにわたくしたちは、自然の美しさを愛し、その貴さを一層深く認識し、厳正な保護と秩序ある利用のもとに、人間生存の基盤であるこの環境を、永く子孫に伝えるため、国民の願いをこめてこの憲章を定めます。
1.知床の原始的自然を、みんなで愛しあおう。
1.知床に接する人は、みんなでその利用に責任をもとう。
1.知床のたくましい動植物に、みんなで愛情をそそごう。
1.知床の雄大な海を、みんなで汚れから守ろう。
1.知床の豊かな恵みと美しさを、みんなで後世に伝えよう。
昭和49年9月14日
(半世紀前に斜里・羅臼両町によって制定された知床憲章)
■60周年・20周年記念事業
記念事業については、令和6年6月に「知床国立公園指定60周年記念シンポジウム」の開催を斜里町のゆめホールで予定しているほか、9月には羅臼町・斜里町の両町において、知床の自然を体験していただくイベントを計画しています。
また令和7年7月には、「知床世界自然遺産登録20周年記念フォーラム」を開催する予定です。これまで町民の皆様や多くの方々に守られてきた知床であり、その礎を築いて頂いた先人に感謝し、その意思をしっかり受け止めていくことと、普遍的な価値を厳格に保全し将来に繋げていくことの決意を表明できるような記念事業にできればと考えています。
■これからの国立公園や世界自然遺産地域のあり方を考える契機として
知床では、平成20年に環境省、関係機関、地域が共同で作り上げた「知床半島先端部地区利用の心得」があります。知床の保全と利用の在り方を考えるうえでとても重要なルールであり、要と言えるものです。知床は世界から注目を集める存在であり、世界に認められた「顕著で普遍的な価値」を広く認知して頂くことと合わせて、それに基づいての活動、取り組みを国内外の多くの方々に知ってもらうことも重要です。
一方で知床憲章制定から半世紀が経過し、気候変動など知床を取り巻く環境変化が以前にも増して顕著になっています。知床をどう守り抜くのかが、次代に引き継ぐことを任された私たちの新たな使命になると考えています。この周年事業を契機とし、行政4者と地域のみなさんとともに、この使命に取り組んでいくスタートの年になればと思っています。また、純粋に60年・20年を迎える知床の地域としての喜びを町民の皆様にも表現していただければと思います。
お問合せ先:産業創生課
【電話】87-2128
<この記事についてアンケートにご協力ください。>