昨年度羅臼町では、令和6年度から始まる「羅臼町健康計画」を策定しました。以前までの計画を見直す中で、ぜひ町民の方にもお知らせしたいことがあります。それは、若い年齢の人が脳卒中を起こし入院することや、もとの体の状態に戻れず仕事を失い、要介護状態になり施設に入るために町を出ていかざるを得ない状況があることです。
脳卒中の「卒」には突然という意味があります。「中」はあたるという読み方があり、字が示すとおり「脳が突然中(あた)る」です。脳卒中の最大の危険因子は血圧です。脳は体重の2%ほどの重さですが、たくさんの栄養や酸素を必要とするため、心臓が送り出した血液の15%を受け取ります。人間の進化の過程で、脳は発達し大きくなってきました。脳を守るために頭蓋骨があることで、限られた容積に多くの血管を走らせています。そのため脳の血管はとても薄い構造をしています。その薄さのために、血圧が高いことにとても弱い臓器で、脳は140~150くらいの血圧までしか耐えることができません。高い血圧を放置することで、徐々に血管が傷み、破れて出血したり、血管が詰まったりします。
様々な研究から、高血圧は医療機関で測る「診察室血圧」で、上の血圧(収縮期血圧)が140以上、下の血圧(拡張期血圧)が90以上となっています。家庭で測る血圧では上が135以上、下は85以上となっています。血圧が高いほど脳卒中や心臓病、腎臓病を起こしやすいといわれます。血圧は高くても自覚症状がほとんどないため、血圧を測ったことがない人は全く気が付きませんし、高いことはわかっていても「何でもない」と思う人もいるでしょう。
血圧は重症度からも分類され、図1のようになっています。
▽図1
高血圧の分類と高血圧の基準日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン
2019(2019年4月25日)
《診察室血圧》
▽血圧とは…
血流が流れていくときに「血管の壁を押す圧力」のことです。
上:「収縮期血圧(心臓が収縮して全身に血液が送り出された瞬間の血圧)」
下:「拡張期血圧(心臓が拡張して血液が戻ってくるときの血圧)」
収縮期血圧と拡張期血圧はそれぞれ独立したリスクです。
収縮期血圧と拡張期血圧は異なる分類に属する場合には、高い方の分類に入れます。
令和4年度の羅臼町の健診結果を見ると、脳や心臓病を起こしやすいといわれている、上の血圧が160以上または下の血圧が100以上の人が45人と、健診受診者の13.9%いました。北海道が6.3%で、道内の市町村の中で4位です。さらに上の血圧が180以上または下の血圧が110以上の人は12人、健診受診者の3.7%です。北海道は0.8%なので約4倍という多さです。12人のうち血圧の薬を飲んでいない人は8人です。血圧は変動することで体を守っています。1回の測定で高血圧と診断されるということはないかと思いますが、継続して血圧測定をする中で平均を出してもらい、それがこのような高い数値であれば血管が傷んでしまうのも無理がありません。
血圧が高い町民の方から「薬を飲みたくない」「一生薬を飲み続けなくちゃいけないんでしょう?」とよく言われます。このような思いが、血圧が高くても薬を飲まない理由になっていると考えられます。血圧を調整する働きが不十分になっているのを、薬が助けてくれます。血圧が下がることで副反応が起こることもあるので、医師とよく相談することも必要です。
▽血圧に関する健診の結果《令和4年度》
■脳卒中と介護
保健・医療・介護等の状況を分析したところ、介護保険において若い年代の人が脳卒中により要介護状態になっていることが分かりました。
40~50歳代の働き盛りに脳卒中が起こり、入院やリハビリ等の医療を経ても麻痺による運動の障害や言語障害、しびれなどの感覚の障害など脳機能の障害が残ることもあります。自力での生活が難しいと介護申請をして認定を受け、介護サービスを利用することもでてくるかもしれません。
仕事を失い、生活費が絶たれます。中には子育て中の人もいるでしょう。家庭では自分の子どもや、高齢の親に介護を頼むことになるかもしれません。障害が重度に残り、寝たきりになったり、在宅での生活が難しい場合は施設を利用することもあります。羅臼町に利用できる施設がなければ、住み慣れた町を離れざるを得ない場合もあります。脳卒中を予防するために何ができたのでしょうか。
要介護認定を受けた若い人は、ほとんど健診を受けていませんでした。そのために、体に起こっていた変化を知らず、予防できた時期がいつだったのかわかりません。普段から血圧を測っていたのか、薬は飲んでいたのか、健診を受けていたらどんな所見が出ていたか。脳卒中になった人は自分でもわからないうちに倒れたかもしれません。
何回もこのような機会に町民のみなさんに声をかけさせていただきますが、ぜひ健診を受けて自分の体の状態を知ってください。自分が持っている病気の原因となるリスクを確認しましょう。「何か見つかると怖いから健診を受けたくない」と言われることもありますが、放っておくほうがよっぽど怖いことが起こる可能性があります。自覚症状が出てからでは遅いことも多いです。国民健康保険の加入者は無料で「特定健診」を受けることができます。健診後は生活習慣病発症のリスクをどれだけ持っているか、リスクを減らすにはどうしたら良いかなどを保健師や管理栄養士、歯科衛生士が個人に合わせてサポートします。自分や家族のために健診を受けましょう。
お問合せ先:保健福祉課
【電話】87-2161
<この記事についてアンケートにご協力ください。>