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タンチョウ博士のお話(第35回)

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北海道長沼町

■あなたは年子(としご)でありませんか?
年子とは「2歳未満の年の差を持つ兄弟姉妹のこと」とされています。ちなみに3人兄弟姉妹の末っ子の私は、一番上の姉とは7歳、兄とは4歳離れていて、年子でありません。
ヒトの妊娠(にんしん)期間は280日ほどなので、上の子が2歳になる前に、次の子が生まれても不思議ではありません。また、ヒトと同じ哺乳類(ほにゅうるい)のキリンは妊娠期間が460日ほど、ゾウは640日前後ですが、もし出産間隔が短ければ、年子のキリンやゾウも居ることになります。
では、タンチョウはどうでしょうか。長沼町の番(つが)いは毎年春先に卵を産み、平均32日ほどの抱卵期を経てヒナを孵(かえ)しますが、ヒナの孵化日(ふかび)は年により違います。
舞鶴遊水地の最初の繁殖は2020年で、以下はすべて確認日ですが、ヒナ誕生(たんじょう)は5月23日でした。翌2021年のヒナは5月10日生まれなので、2020年と2021年のヒナは年子です。次の2022年のヒナ誕生は5月14日で、その時点で前年のヒナは1歳を過ぎたばかりなので、やはり年子です。さらに、2022年と2023年生まれのヒナ(写真)も年子です。つまり、毎年ヒナが生まれるとみんな年子なのです。
皆さんは、タンチョウは毎年卵を産んでヒナを育てるのは当たりまえ、と思っておられませんか。しかし、多くの番いを調べると、舞鶴遊水地の夫婦は二つの特色を持つ貴重な番いだと分かります。
そのひとつは初産年齢です。タンチョウは普通3歳で性成熟(せいせいじゅく)しますが、最初の卵を産むのは5~6歳のことが多く、長沼町のメスのように3歳でヒナを育てるのはメス全体の5%ほどに過ぎません。ふたつめは育雛継続(いくすうけいぞく)年数です。同じ番いが子育てを何年続けて行うかをみると、単年度(たんねんど)(成功の翌年は失敗)の例が70%ほどなのに、舞鶴のように4年連読は4~5%で、これが5年(舞鶴は今年が5年目)となると、メスではわずか1%ほどなのです。もっとも、最長記録15年というとんでもない野生標識付きメスが1羽いて、彼女はすでにあの世へ飛び立ちましたが、記録は当分破られないでしょう。
とすると、課題がまたひとつ見えてきました。タンチョウでは毎年続けて繁殖しない番いが多いなか、舞鶴のように繁殖を続ける番いがいるのはなぜでしょう?恐らく、キツネ・アライグマ・オジロワシなど、特にかよわいヒナへの天敵の多さとか、餌の豊かさなどの生息環境や、番いの個体差などが絡み合っているのでしょう。が、残念ながら理由はまだよくわかりません。
しかし、ここ数年タンチョウの総数は増えていないようで、鳥インフルエンザの危険も考えると、絶ぜつめつ滅の心配は消えたとは言えません。従って、道央という新たな地域での連続した羽数増加は、タンチョウという種しゅを保つのにとても重要なのです。何はともあれ、今年も舞鶴遊水地でしっかり子育てしてくれることを、心から願っています。
(文:正富宏之)

問合先:役場企画政策係
【電話】76-8015

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