◆『涼』
爽やかな季節になりました。然別湖周辺の森も若葉が芽生え、柔らかな緑色の木漏れ日が降り注ぎます。水面がキラキラと輝き、清々しい森の香りも相まって心身共に満たされていく気がします。
ゆっくりと湖岸を散歩する、森の中を散策する、然別湖のゆったりとした時間に身をおくのに丁度良い6月です。
この季節に顔を出すのがエゾハルゼミ。体長は約4センチメートル、主に山に暮らす蝉です。
鳴き声は「ジュージー ジュージー リリリリリリリリ」と、軽やかにそして涼やか。他の蝉に比べ暑苦しさがありません。
道外から訪れたお客様からも「6月なのにもう蝉が鳴いているのに驚きましたし、北海道の蝉は鳴き声まで涼やかなのですね」と言う感想を頂きました。
確かに、本州で聞くアブラゼミやミンミンゼミの鳴き声は暑さを助長する感じはありますが、エゾハルゼミには感じません。
木々をよく見ると、樹皮の色が保護色になった蝉の姿を比較的簡単に見つけることができます(体色が薄いエメラルドグリーン色の蝉はまだ羽化したばかり)。
蝉の声を聞きながら辺りを散策していると、今度はひょっこりと林床から顔を出す植物がいます。葉も花も茎も真っ白な「銀竜草(ギンリョウソウ)」です。落ち葉を掻き分けてひょっこりと頭を下げたような白い姿を見せることからユウレイタケといった別名もついていますが、葉緑素を持たない菌寄生植物です。
この独特な佇まいが人気で、お目当てに観にくる方もいて、透明感のある姿やその不思議な生き方から「涼しさ」を感じます。6月の緑の中を歩いている時に出会えると嬉しい植物です。
ここ数年、真夏日を記録する日もあり暑いイメージの6月。虫の声や花の姿から「涼」を得るのも良いかもしれません。
写真・文:然別湖ネイチャーセンター
【URL】https://www.nature-center.jp
※写真は本紙をご覧ください。
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