■屏風絵の復元
指定文化財「印西牧場之真景(しんけい)図」は江戸時代に白井市から印西市にかけて広がっていた幕府の馬の放牧場、印西牧で行われた野馬捕りの様子を描いた絵です。真景とは写実を意味し、遠近法を用いて描かれています。この絵は明治3(1870)年に谷田村の内藤猪太郎の依頼で、印西市発作出身の腰川芳齊(ほうさい)が描いたもので、下絵も確認されています。牧を描いた絵は希少で、真景図は『千葉県の歴史通史編近世I』の巻頭にカラーで掲載されています。
印西牧場之真景図は郷土資料館が保管します。平成11年に修復され現在は軸装されていますが、本来は六曲一隻(ろっきょくいっせき)の屏風絵でした。屏風絵は右から1扇2扇と数えますが、真景図は4扇だけが完存し、1~3扇は一部欠損、5・6扇は失われています。そのためパソコンで下絵を合成・彩色し、全体を復元しました。現在は屏風に仕立て、郷土資料館で常設展示しています。
屏風絵は縦書きの文章同様に、右から左へと時系列が進みます。真景図では絵の上が北、下が南になり、右下の巨木(桜台小・中学校付近)から左上の捕込(とっこめ)(十余一地区)へ牧士(もくし)たちが野馬を追う風景が描かれます。絵の上部は鹿島道(通称木下街道)が横断し、道沿いには2軒の茶屋(二軒茶屋)と1本の桜の木(一本桜)が描かれます。牧を仕切る土手の上には多くの見物客や屋台が描かれ、絵の中央上に筑波山がそびえます。
屏風は本来、部屋の間仕切りとして使用する調度品で、状況に応じて紙蝶番(かみちょうつがい)で両方向に折れるようになっていますが、鑑賞の際は鋸歯状(きょしじょう)に折って見るのが一般的です。屏風絵は折り曲げることで遠近感が強調され、見る方向によって絵の見え方が変化するのが特徴です。復元した真景図の屏風は、右側から見ると野馬追いの状況が、左側から見ると池や捕込、筑波山、巨木というランドマークが主体的に見えるように変化します。
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