今年も台風シーズンが終わりに近づきました。今回は「台風の終わり」について注意すべき事項をお話したいと思います。
「台風」は、熱帯低気圧のうち、東太平洋域で最大風速が18m/sを超えた物を言います。「熱帯低気圧」は、海水が蒸発し、蒸発した水蒸気が雨や雲となる水滴に変わる時に発生する潜熱をエネルギー源として上昇気流を発生させ、成長します。したがって、台風や熱帯低気圧の成長には、暖かい海水が必要となります。台風が海水温26℃以下の地域まで北上すると急速に勢力が減退し、上陸しても、水蒸気が無いのでやはり衰えます。
今までは、夏から秋になると海水温が低下するので、日本に近づくと急速に勢力が衰えたり、消滅していましたが、温暖化の影響で海水温が高い状況が続いているため、台風が接近したり上陸する期間が延びる危険性がありますので、「11月だから台風は来ない」などと単純に考えないでください。
また、「台風」が「熱帯低気圧」や「温帯低気圧」に変化して「消滅・終了」したというような表現をする場合がありますが、要注意です。「熱帯低気圧」化は、単純に風速が規定値以下になったことを意味するだけで、依然、17m/s以下の強風は吹いていますし、状況によっては、強風域や降雨域自体は拡大している可能性もあります。
特に、注意が必要なのは「温帯低気圧」化です。「熱」が「温」になったのでイメージとして穏やかになったような感じがしますが、実態は全く違います。温帯低気圧化とは、台風自体の性質が変化することで、勢力の強弱を示すものではありません。暖かい空気で構成される台風が北の気団と接することで、冷たい空気を取り込み気温差によって成長する低気圧に変質することです。結果として、弱まった台風が低気圧として再成長したり、前線を広く形成・刺激して、台風以上に広範な地域に大雨災害をもたらす危険性があります。例えれば、富士山のような独立峰から北アルプスのような一連の山脈になるようなものです。激甚性は低下するかもしれませんが、影響域は前線全体に拡大することが意味します。
「早く終わってほしい」という願望もあって、イメージ先行で捉えやすいですが、天気予報等の情報は最後までしっかり聞いて、判断するように心がけましょう。
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