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歴史資料館 連載三八五

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千葉県鋸南町

■師宣が教える浮世
菱川師宣は浮世絵を創始し、江戸で大人気となりました。その仕事の大部分は、江戸の町に生きる人々への情報発信、最新流行を紹介する版本(はんぽん)を出版することに力を注ぎました。
師宣の版本を見ると、見開きで挿絵(さしえ)を全面に描き、文章を上部に区切った絵本で、誰もが見やすく、楽しめて、さらにためになるという内容でした。現在で言えば、江戸のタウン情報誌、ファッション雑誌、マンガ雑誌、写真週刊誌、若者情報誌など。まさに現代のメディア情報誌の先駆(さきが)けは、師宣が作り出したと言っても過言(かごん)ではありません。
たとえば、「大和(やまと)の大寄(おおよせ)」という若者向けの本には、恋愛テクニックが紹介されます。ある男の子が、一人の女の子を好きになります。でも無視され続け、振り向いてもくれません。さあ、その場合、どうするか。この本にはその恋愛成就(じょうじゅ)テクニックが描かれます。とにかく毎日手紙を送れ。無視されても送り続けろと教えています。そして、何日かたった時、ぴたっと送るのをやめろ。すると、女の子は、気にもとめなかった毎日来る手紙が、ぱたっと来なくなったわ。あの人はどうしたのかしら。と逆に気になり始めて…。相手から連絡してくる。そうすればこっちのもの。うまく行くのだ。と教えています。
その他の絵本では、江戸の町の見世物小屋(みせものごや)で今大評判のマジシャン「いにしえの伝内(でんない)」が大人気。何もない筒(つつ)から、鞠(まり)やハトやウズラを取り出して、大評判、とか。男性諸君、初めての吉原へ行くときは、こんなことを注意しな。初心者と悟(さと)られまいと、力んで、わざと肩をいからして話をすれば、相手はそっぽを向いてしまうよ、とか。今どきの女性たちは化粧ばかりに余念(よねん)なく、身だしなみばかり気にしているなんて、だめだよ。肝心(かんじん)なのは心なんだから。などと説(と)いています。
師宣の絵本、読んでみたくなりませんか。菱川師宣記念館には、読み下した師宣の絵本が、いくつか閲覧(えつらん)できるようになっています。

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