今回は認知機能に影響を与える因子として、アルコールとアルコール性認知症についてお話ししましょう。
アルコールは、古くから私たち人類とともにある薬物のひとつで、人間関係を円滑にしたり、ストレスの解消になったりと、とても役に立ちます。有用性も高い一方で、依存性が強く、一度に大量に飲酒したときだけではなく、長期間の大量飲酒によって身体的、精神的に大きなダメージを与えます。
まず、依存性について説明しましょう。依存には精神依存と身体依存の2種類があります。精神依存とは精神的にアルコールを飲まないといられない状態のことをいいます。身体依存とは、耐性の形成と急にやめたときに離脱症状がでることをいいます。耐性の形成とは、同じ効果を得るためによりたくさんのアルコールが必要となることです。「お酒を鍛える」といって、あまり飲めなかった人でも、飲み続けていくうちにたくさん飲めるようになったりしますが、これはアルコールの耐性ができやすいからです。そして、継続して飲酒していた人が急に飲むのをやめると離脱症状が出ることがあります。体内にずっとあったアルコールが急に無くなってしまうために、身体が不安定になってしまうのです。離脱症状として、手指の振戦、大量の発汗、血圧上昇、吐き気、イライラ、不安、抑うつ状態、幻覚や妄想などが出現します。人によっては、わずか十数時間の間、飲まなかっただけで離脱症状が出てしまい、それを抑えるためにまた飲んでしまったりします。
アルコール依存症という病気があります。現在の日本で患者数は80万人以上と言われ、その予備軍も含めると440万人にもなると推定されています。アルコール依存症は飲酒量のコントロール障害です。「今日は飲むのをやめよう」、「ここで終わりにしよう」と思っても飲酒が止められない状態です。長期大量の飲酒は、身体的には肝臓疾患、膵臓疾患、心疾患、消化器疾患など60以上もの病気やけがの原因になると指摘されています。さらに、精神的にはアルコール精神病の原因となるだけではなく、アルコール性認知症の原因となります。長期大量の飲酒により、脳の前頭葉が萎縮してしまう人が多く、前頭葉の機能低下に伴い、自己中心的となったり、怒りっぽくなったり、感情の不安定などが認められるようになります。
厚生労働省が推進する「健康日本21」では、アルコール依存症の発症リスクが少ない「節度ある適度な飲酒」を提案しています。男性では1日にビール500m(l日本酒なら1合弱、25度の焼酎なら100ml、ワインなら2杯程度)の量がそれに当たります。女性の場合には、男性よりもより少量かつ短期間でアルコール依存症になると言われており、これより少ない量が適量となります。かなり少ない量に思えるかもしれませんが、脳を守るためには重要なことです。
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問い合わせ(申込先):福祉課包括支援センター
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