今回は、人類の歴史から認知症について考えてみたいと思います。私たちは、約20万年前に誕生したホモサピエンスと呼ばれる人類です。これまでこの地球上には20種類以上の人類が存在したことがわかっています。そして、他の人類はすべて絶滅し、私たちがこの地球上に生き残った唯一の人類となってしまいました。さまざまな人類との生存競争のなかでも、共通の祖先をもつネアンデルタール人は、ホモサピエンスの強力なライバルといえる存在でした。以前はネアンデルタール人は頑強な肉体を持っているものの、言葉を持たず、知的にも低い、野蛮な種であると考えられていました。しかし、現在では脳の容積も大きく、言葉をもち、ホモサピエンスに劣らないほど知的で文化的な生活を送っていた人類であったと考えられています。一対一であれば、ホモサピエンスが到底かなわなかったであろう、屈強で知的に高いネアンデルタール人は約4万年前に絶滅してしまいました。対するホモサピエンスはその後も着実に進化を重ね、現在はこの地球上で70億人の人口を抱えて、繁栄を謳歌しています。
ネアンデルタール人とホモサピエンスの明暗を分けたのは、集団の規模であったと言われています。ネアンデルタール人の集団は大きくても20人程度、同じ頃のホモサピエンスは数百人規模の集団で生活していることもありました。コミュニケーション能力が高いホモサピエンスは、より人数の多い集団で助け合い、協力することができていたのです。さまざまな地球規模の気候変動などの危機を多人数で助け合うことで乗り切ることができたのです。私たちホモサピエンスが地球上でこれほどの繁栄を謳歌している鍵は、人と人との間のコミュニケーション能力であったのです。
2019年12月に中国ではじめて報告された新型コロナウイルス感染症、わずか数ヶ月のうちにパンデミックと呼ばれる世界的な流行となりました。人と人との物理的な接触で流行していく感染症の感染拡大を防ぐために、人との接触をなるべく減らすことが社会の重要な課題とされました。特に感染すると重症化しやすい高齢者の人たちは、感染を予防するために人との接触を減らす必要があったのです。こうして人とのコミュニケーションの機会が大きく失われてしまいました。その結果、もの忘れが見られるようになったり、認知症の進行を訴える人がたくさんもの忘れ外来に来院しています。
最近、失われてしまった人とのコミュニケーションの機会を取り戻す取り組みがいろいろ行われています。今回は来る11月23日(土・祝)の「古民家の小さなお祭り」というイベントをご紹介しましょう。これは、関原59にある築126年の古民家で行われる、世代間交流、地域での人間関係の活性化を目指すイベントです。作品の展示、昔懐かしい餅つきや、音楽を通じて、交流を図っていきます。詳しくはこの広報のイベント告知欄をご覧ください。
[参考文献]NHKスペシャル人類誕生ワン・パブリッシング刊2023年
◆上野先生を講師に迎えた「認知症学習会」を毎月開催しています。
ぜひご参加ください。
日時:11月20日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター
問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116
<この記事についてアンケートにご協力ください。>