■残しておきたい風景
印南町長 日裏勝己(ひうらかつみ)
「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る…」で始まる文部省唱歌『茶摘み』は、だれもが耳にしたことがあると思います。今年の八十八夜は、5月1日でした。立春(2月4日)から数えて88日目であることからその名がついたとのことです。歌詞にあるように、野にも山にも若葉が茂り、茶色だった田畑はもくもくと草が茂っています。ちょうどその頃が種まきや田植えの準備、茶摘みなど春の農作業を行う時期となっています。印南町では茶摘みをしている風景は見かけませんが、種まきや田植えの準備は欠かせません。我が家でも5月3日モミマキを行いました。ゴールデンウィークで帰省していた子どもや孫にも手伝ってもらい、わんさわんさの内に済ますことができました。あとの水やりなどの管理は家内が担当してくれていますが、うまく芽が出てしっかりした苗に育つことを願っています。5月11日の土曜日には、午後から共同作業で用水路の掃除を行いました。家の窓から見える30枚ほどの棚田に水を引くための水路で、草刈りや水路にたまった土砂やごみを取り除く作業です。役場での業務は力仕事から遠のいており、体のあちこちに痛みを感じたところです。
4月16日に放送されたテレビ和歌山の「あのじゅうよう」(あの頃の方言)の番組の取材が4月2日に行われました。テレビ和歌山が開局50年を記念して、県内30市町村長が出演するものです。「青年時代のふるさと印南町にまつわる一番の思い出」「未来へ残したいふるさと印南町の風景」の2つをテーマに4~5分の放送でした。「未来に残したい風景」で選んだのは家の窓から見える棚田の風景を選びました。高台から写した43年前の棚田の写真があったことから、今の風景と比較ができました。真妻小学校舎は今も残っていますが廃校となり、大きく変わったのは子どもたちの姿が見えないことです。少子化からの学校統合は仕方がないことと思いますが、各地域から棚田風景が無くなっていくことに寂しさを感じています。
家の前の田んぼに水が入りだすと、喜ぶのはカエルたちです。堰を切ったかのようにカエルの大合唱が始まります。特に雑音には聞こえませんが、一斉に泣き出すとすごい音量になります。また、田んぼの隅にたえず水の湧き出しているところがあり、年中水が流れています。そこにはいつもメダカが泳いでいます。20年近く前のことと思いますが小学校から子どもたちがメダカをすくいに来たことがありました。あるとき当時の先生にお会いし、メダカすくいのことを話されていたことを思い出しました。間もなく蛍も飛び交います。いつまでも残しておきたい風景です。
時が経つのは早いですが、心に残る思い出も大切にしたいと思います。
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