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自治体の皆さまへ

特集 脱炭素社会の実現に向けて(2)

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和歌山県紀の川市

■interview
●市民が誇れる紀の川市を目指して
有限会社大原運送 大原伸規さん(45歳)

米を栽培する過程で、必ず発生する大量のもみ殻の処分に困っていました。放置すれば、産業廃棄物になってしまうし、焼却すれば、その過程で二酸化炭素を発生させてしまう。そんな時に海外の取り組みで、もみ殻を燻くんたん炭にして、炭素クレジットとして企業に権利を販売していることを知りました。日本で取り組まれている「Jクレジット(くわしくは下記参照)」は、認証を受けた事業者が削減した炭素量を数値化し、企業間取引を行うことができる制度。私たちは運送業も営む中で、二酸化炭素を排出しているからこそ、まずはJクレジットで自社の実質的な二酸化炭素の排出量をゼロにして、日本一環境に優しい会社を目指したいと考えました。まさに「CO2の地産地消」です。
紀の川市は農業が主要産業。これからの市の発展には、なにか特徴を出していかなければいけないと考えています。例えば、一定の地域だけでも、さまざまな取り組みを実施することで二酸化炭素を実質ゼロにできれば、外部に対して誇ることができます。そのためには地域での連携を強めて、ともに紀の川市の発展に向け手を取り合っていく必要があると思います。市民みんなで環境を守り、誇れる紀の川市にしていきたいです。

●一人一人が危機感を持っていますぐに取り組みを
株式会社かたやま農園 片山篤さん(58歳)

日頃、農業に従事していると、地球温暖化の影響を痛感します。気温の上昇により、開花の時期がずれることで受粉が上手くいかないなど、農作物の成長に影響が生じています。危険なのはこの現状に気づいている人が少ないこと。一人一人が危機感を持って、脱炭素に向けするべきことの意義を理解していく必要があると思います。私自身、地球温暖化に対し危機感を持っていた時に知人から「4パーミル・イニシアティブ(くわしくは下記参照)」という取り組みを聞きました。土壌の表層の炭素量を年間0.4%(4パーミル)増加させることで、経済活動によって発生する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにできるという考え方。私個人としては、必要以上に畑を耕さない不耕起農法を実践しています。通常の水田であれば、4~5回ほど耕しますが、耕す回数を減らすことで、二酸化炭素を放出する微生物の増加を抑えることができます。また、化学肥料の使用を控え、有機肥料もしくは無肥料で栽培に取り組むことで、土壌での炭素吸収・固定量を増加させ、脱炭素に取り組んでいます。
もちろん、有機肥料や無肥料で農業を行うことで、大変なこともありますが、自分たちはまだしも、自分たちの子どもや孫の世代のことを考えると、「今」行動をしないといけないと感じています。まだ脱炭素に目を向けていない人にも、自分事として考えてほしいです。

▽Jクレジット制度

▽4パーミル・イニシアティブ

■当事者意識を持つことから
市民部 環境衛生課 中谷健一課長

地球温暖化は決して一部の人や企業の活動によって引き起こされたものではありません。地球に住む人類全ての活動によって、地球温暖化は進行してきました。これは同時に、地球温暖化対策や脱炭素社会の実現は一部の人や企業の頑張りだけでは達成できないことを意味しており、私たち一人一人が当事者意識を持ち、日々の生活や仕事を通じて取り組む必要があります。そのため、各種事業を通じ、市民や企業に『地球温暖化問題は誰かが取り組むものではなく、誰もが取り組むもの』という啓発を行い、意識づけることが今の行政に求められている役割であると考えています。
最終目標である地球温暖化の脱却という人類共通の目標に向けて、まずは紀の川市民全員が当事者意識を持って省エネ・省CO2に取り組んでいくことがとても重要です。市としては、カーボンニュートラルの実現を目指して、ハード・ソフトの両面から取り組みを実施していきます。取り組む施策は、庁舎等公共施設の照明のLED化、公用車へのEV車の導入、廃棄物の再資源化やDX化の推進などです。また、これら以外にもさまざまな方策を検討・導入することで、2050年カーボンニュートラルの実現を目指していきます。

※DX化…デジタル技術を社会に浸透させて、人々の生活をより良いものへと変革すること

■これからではなく「今」から
ゼロカーボンシティ宣言を受け、市としては喫緊の課題である脱炭素に向けた取り組みをこれまで以上に積極的に実施していきます。しかし、脱炭素社会の実現には、行政だけではなく、市民や事業者といった全ての当事者の行動・協力が必要不可欠です。今回の特集では、実際に脱炭素に向け、取り組みを始めている二人の事業者を紹介しました。全ての人が実施できる取り組みではないかもしれませんが、それぞれの当事者ができることはたくさんあります。地球温暖化対策のために、まず自身が身近にできることから取り組み始めてみませんか。
「これから考えてやっていこう」ではなく、今、この瞬間にも温室効果ガスが排出され、地球温暖化がじわりじわりと進行し続けていることを忘れないでください。地球温暖化による気候変動の影響をできる限り少なくするためには、一人一人が今すぐに行動を起こし、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、脱炭素を目標に掲げ、一丸となり進んでいく必要があります。
自分たちだけでなく次の世代の人たちのためにも、環境を守る取り組みを「今」から始めましょう。

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