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自治体の皆さまへ

特集 大切ないのちを守るために(3)

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和歌山県紀の川市

■interview3-支援者の立場から-自死遺族への支援を通じて感じることとは?
キーワードは「緩む・緩まる・緩める」

高野山大学
文学部 密教学科
森崎雅好 教授
Masayoshi Morisaki
Profile:専門分野は臨床心理学。自殺防止活動に尽力し、わかちあいの会和歌山「うめの花」では自死遺族のケアを長年に渡って実施中。

●気持ちの整理のために
自殺予防とともに、大切な家族を自死によって失われた自死遺族が交流を行う、わかちあいの会和歌山「うめの花」で遺族の人たちの支援活動を行っています。そこでは、2か月に1回の交流会と個別相談を実施しています。
自殺・自死に対する世間における偏見が、いまだに根強いのが現状です。そのため遺族は、自分たちの苦しみをなかなか周りの人に話すことができません。同じ苦しみを感じている人同士で思いを共有することで、支え合いにつながります。遺族は、気づいてあげられなかった、助けられなかったという「罪の意識」を持ちやすく、愛する人を失った悲しみと苦しみの感情に圧倒されます。うめの花に来てくれる人たちに対して、そういった気持ちを整理し、心に余裕を持って、未来の計画を立てられるようにと願いながら、わかちあいの場に臨んでいます。

●追い込まれる前に休息を
自殺を引き起こす原因は、ほとんど分かっていないのが現状ですが、過剰なストレスが一つの要因であることは分かっています。多くのストレスがかかり、追い詰められてしまうと、とても苦しい絶望的な気持ちになり、その状況から脱出しようとした時に自殺は引き起こされると、私は考えています。誰しも予期せぬことが起こると、想像以上のダメージを受け、追い込まれます。その時に複数の要因が重なり、メンタル面と身体面での不調が相まって、自殺を選ばざるを得なくなってしまうのだと思います。
自殺のリスクを減らすためには、身体の休息、つまりは睡眠時間の確保がなにより大事です。また、愚痴を言えるような頼りになる人を作っておくと、つらい時に、弱音を吐き出すことができ、自分一人で抱え込まずに済みます。
社会や食事への興味の消失や焦りの感情の発現など、メンタルヘルスに不調が生じている人がいれば、気にかけてあげてください。「頑張れ」などといった不用意な応援は逆効果で、余計に追い詰めてしまう可能性があります。自殺予防では、身体と心をリラックスさせるために「緩む・緩まる・緩める」を意識してほしいです。
(※)自殺念慮を持っている人は、衝動的に、自殺という悲しい選択をしてしまうことがあります。ゲートキーパーや医療機関など、あなたの話を聴いてくれる人たちがいます。まずは相談に行ってください。

▽「ゲートキーパー」とは?
ゲートキーパーは自殺の危険を示すサインに気づき、話を聴いて必要な支援につなげ、見守ることができる人。言わば、「命の門番」です。
市では、民生委員児童委員の人たちなどを対象にゲートキーパー養成講座を実施しています。講座の内容など、くわしくは健康推進課まで問い合わせください。
・気づく
・傾聴
・つなぐ
・見守る

※自殺念慮(じさつねんりょ)…死のうと思っている状態

■市が実施する自殺対策
いのちはひとつ みんなで守ろう 紀の川市

市では、自殺対策を地域一体となり進めるために「いのちはひとつみんなで守ろう紀の川市」を基本理念とした「いのち支える自殺対策計画」を策定しています。
自殺については、クローズドな情報が多いので、実態をつかむのが難しいのが現実です。その中で、少しでも自殺を選択する人を減らすためには、つらい思いや悩みを抱えている人が追い込まれて孤立してしまう前に、支援の手を届けることが大切です。そのためにも、庁内における連携を強固にするだけでなく、市民のみなさんにも、「孤立を防ぐために自分ができること(簡単な声かけやささいな変化への気づきなど)」を頭の片隅に持っておいてほしいです。
小さな悩みや不安は一人で抱え込んでいると、時間とともに雪だるま式に大きくなってしまいます。防ぐためには、一人一人が支え合うことが大切です。支え合いによって救える命があります。自殺予防のために、できることから取り組んでもらいたいです。

・市では、小学4年生を対象にいのちの大切さを学ぶ「いのちの授業」を実施し、早い年代からの啓発活動に努めています。

●相談窓口一覧
▽電話相談
#いのちSOS[24時間対応]
【電話】0120-061-338
よりそいホットライン[24時間対応]
【電話】0120-279-338
はあとライン[24時間対応]
【電話】0570-064-556
いのちの電話
【電話】0570-783-556[午前10時~午後10時]
【電話】0120-783-556[午後4時~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時]
チャイルドライン[午後4時~9時]
※18歳までの子ども専用
【電話】0120-99-7777
和歌山県精神保健福祉センター[自死遺族・薬物依存・ギャンブル相談は要予約]
【電話】073-435-5194

▽LINE相談
生きづらびっと[午前8時~午後10時30分]
いのちのセーフティーラインわかやま[平日午前9時~午後5時]

■いのちを守るため
自殺はさまざまな要因が複雑に絡み合い、出口を求めてもがき苦しんだ末に選択肢がなくなり、社会から孤立し、引き起こされてしまいます。「自殺」という選択肢を選んだ人も、そこに至るまでは必死に生きようとしています。もがきながらも生きようとしている人を孤立させないために、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現が求められています。
自殺を選択することで、遺族や残された周りの人たちは、自責の念に駆られてしまいます。今、つらい状況にいる人にも、必ず頼れる人がいます。家族、友人、行政・医療機関など相談先は誰でも構いません。苦しみや悲しみを一人で抱え込まずに相談してみてください。反対に、もしあなたが誰かの相談を受けることがあれば、相手の感情に注意し、気持ちを否定せず、受け止めてあげてください。
「自殺」は防ぐことができる社会問題です。かけがえのない大切な命を守るためにできることは何か、あなたやあなたの大切な人のためにも、市民のみなさん一人一人が「命」について一度考えてみてください。

問い合わせ:健康推進課
【電話】77-2511

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