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世界遺産を読み歩くー学芸員通信(全12回)ー 第7回

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和歌山県那智勝浦町

■第7回 紀伊山地の霊場と参詣道のすごさ(3) 熊野三山編
平成16年7月に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」は、今月で20周年を迎えます。
本世界遺産は3つの霊場と参詣道によって構成されています。それら霊場のなかで最大の面積をもつのが「熊野三山」です。
「熊野三山」は熊野本宮大社・熊野那智大社・熊野速玉大社と青岸渡寺からなっています。これらは、本来は別々の自然信仰を起源とする3つの神社でした。しかし、神仏習合などの影響を受け、主祭神を相互に勧請することで熊野三所権現とされるようになりました。
では、それぞれの社寺にはどのような特徴があるのかみてみたいと思います。
まず、田辺市にある熊野本宮大社についてです。熊野本宮大社は元々、「熊野坐神社(くまのにますじんじゃ)」と呼ばれ、大斎原(おおゆのはら)に所在していました。大斎原は熊野川、岩田川、音無川の合流地点にある中洲のことを指します。参拝者たちは最後に川を渡り身を清めてから、神域に入ったそうです。しかし、現在の本宮大社は大斎原付近の丘陵地に移転しています。これは明治22年の水害の際に、本宮大社の社殿の一部が流出するという被害をうけたからで、移転された4社については被害を免れた社殿となっています。また、現在も大斎原には流失した下四社、中四社を祀るほこらが建てられ、大鳥居も存在しています。
次に新宮市にある熊野速玉大社についてです。神社の背後にある神倉山には、ゴトビキ岩をご神体とする神倉神社が存在しています。この地は熊野の神様が最初に降臨された場所とも言われています。そして、この神倉山から神様を遷すための社殿がふもとに造営されました。これが現在の速玉大社の位置であり、元宮である神倉神社に対する新しい社殿ということで、新宮と称されたようです。神倉神社では毎年2月に松明をもって山を駆け下る「御燈祭」が開催されており、和歌山県の無形民俗文化財として指定されています。
そして、当町に所在する熊野那智大社や青岸渡寺、補陀洛山寺も世界遺産の一部になっています。熊野那智大社や青岸渡寺は那智大滝を信仰の対象とする寺社であり、補陀洛山寺は補陀落渡海がおこなわれました。
次回からはこれら町内の寺社について、詳しく紹介していきます。

文・前田 愛佳(学芸員)

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