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高野山の植物 3

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和歌山県高野町

◆日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし
~仏教行事・密教行法に関わりのある植物~
▽櫨(はぜ)、黄櫨(はぜのき)(ウルシ科) 花ことば「真心」「賢明」

今回は「櫨(はぜ)」とウルシ科の植物がどのように仏教・密教に関わっているのか、お話ししてまいります。

ウルシと聞くと、漆(うるし)塗りや漆器、またはかぶれなどを連想するかと思います。まわりを見渡してみると、食器や工芸品などとても多くの物にウルシが使われており、意外と私たちの生活の中で身近な存在となっています。

櫨は、ウルシ科ウルシ属の雌雄異株の落葉小高木で、樹高は5〜10メートルほどあり、ウルシほどではないですが樹液に触れるとかぶれをおこすことがあります。5~6月頃に花を咲かせ、秋頃には美しく紅葉し果実が実ります。東南アジアから東アジアの温暖な地域に自生する植物で、日本古来より自生しているヤマハゼとは別の種類であり、日本への渡来は安土桃山時代に中国南部から種子が輸入され、蝋燭(ろうそく)の蝋(ろう)を採るために栽培されたのが始まりとされているようです。

櫨の実は和蝋燭の原料として、また坐薬・軟膏の基剤、ポマード、石けん、クレヨンや化粧品の原料として利用されます。現在でも食品の表面に光沢をつけるために使用されることがあります。古くは食用として使われていたことがあったようで、櫨の花の蜂蜜を時々見かけることがあります。また江戸時代には藩政の財政を支える木蝋(もくろう)の資源として西日本の各藩で盛んに栽培されていたようで、現在山地に見られる櫨はこれらの栽培されていたものが野生化したものとみられています。

次に、櫨をはじめウルシ科の植物が我々の生活にどのように関わっているかご紹介いたします。ウルシは食器や生活用品、調度品など幅広く木や紙などに塗料・接着剤として使われるもののひとつですが、高野山にも数多くのウルシを使用した物が溢れています。高野山内の寺院では、お祝い事や年忌の法事の際に『御斎(おとき)』といってお寺にお招きしたお客様に対してお食事を振る舞う機会が多くあり、その際に使用する食器やお膳、配膳用のお盆やお櫃(ひつ)など、御斎に用いるだけでも数多くの漆器が存在しています。

また、食器以外にも文箱や茶道具・楽器など、その他調度品にも用いられており、漆塗りの製品に伝統工芸である蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)細工などの美しい模様をほどこしたものなどがあります。こういった優れた技術は古くから行われ親しまれ、寺院に関する荘厳具や仏具・仏像など広い範囲でウルシが使われていることが見えてきます。

このように、和製の調度品としてウルシが塗られたものは、現在では日本の美として世界的にも愛されています。みなさまも何かひとつ漆塗りの素敵な物をお手元に置かれてはいかがでしょうか。

次回は、櫨(ウルシ科の植物を含む)と仏教行事などとの関わりをご紹介させていただく予定です。

問合せ:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺
【電話】0736-56-2012

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