日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし
~仏教行事・密教行法に関わりのある植物~
◆櫨(はぜ)、黄櫨(はぜのき)(ウルシ科)
花ことば「真心」「賢明」
前回、ウルシ科の植物を主にウルシ塗りの荘厳具について紹介させていただきました。
今回も櫨から少し逸れますが、同科植物によるウルシ塗りの製品の種類が多いので引き続き仏前を飾る荘厳具として、どのような【塗りもの】があるのか紹介してまいります。
仏像とならび私たちにとって身近な仏具の「位牌」がありますが、【高野位牌】といって地域の特産品である高級位牌として古くから親しまれています。
高野山や、その周辺では納骨のことを「骨のぼり・骨のぼせ」といい、亡くなった人の葬式の翌日に高野山へ納める風習があります。昔は骨のぼりに来た人は位牌を買い求めて帰ったそうです。現在高野山内でも高野位牌を作る工房がありますが、古くは杖ヶ薮で盛んに作られていました。元々は細工など無く模様を描いただけの簡単な作りだったようですが明治末期頃、京都から新しい技術が取り入れられ現在のような立派な細工が施された位牌が作られるようになりました。高野位牌の特徴は塗りが薄く手彫りしやすいように作られています。また金剛峯寺には天皇陛下および歴代座主の大変立派なお位牌が奉祀されています。
最近では海外製の位牌がたくさん出回っていますが、コストが低いので安価に手に入る代わりに年数が経つと反ったり捻れたりなど、職人の手作業による高野位牌とは品質に大きな差があるようです。
物の価値というのはその場その場で変化するもので、安価で大量生産できるものだから粗悪とも限らないし、高価で希少性が高いからといって優れたものであるとは限りませんが、位牌の意義として長期間耐えうる高野位牌は価値が高いと言えるのではないでしょうか。
寺院やご家系の供養において重要な仏具として用いられる位牌ですが、高野山に限らず私たちの生活の中に【塗りもの】の文化が溶け込んでいることがお解りいただけたかと思います。
問合せ:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺
【電話】0736-56-2012
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