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自治体の皆さまへ

「学びの杜」に想うこと

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和歌山県高野町

高野町の子ども達は町民の皆さんの優しさに抱かれ、素晴らしい環境の下、人格を形成するに大切な学齢期を過ごさせていただいております。町民の皆様方に心からお礼申し上げます。
さて、9月1日に教育複合施設「学びの杜」が竣工しました。この建物は長岡藩の「米百俵」の精神「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」の精神に通ずるものがあり、少子化が叫ばれる社会情勢のなか、高野町の皆様には建設に係る多くの費用を教育に託していただきました。今後も皆様の負託にお応えできるよう全身全霊で取り組んでまいります。

今、高野町の学校教育は子ども達が中学校を卒業し高校や社会(大学)でより深く学ぶ力や、誰もが予想し難いこれからの社会を生きるために必要な基礎力(地力)を身に付けるため、懸命に授業改善の取組みを進めています。これまでの、教師側からの一方向の授業スタイル「講談型授業」では一人ひとりに合った学びを届ける事に限界があります。これからは、児童生徒それぞれの学習深度に合わせて自分のペースで自ら学ぶ形態や多くの人と対話し、助け合い共に学び合い、そのような中から「自ら学び」「自ら考え」「自ら決定し」「自ら責任を持った行動」をおこない、子ども達がそれぞれの幸せを掴むことができるよう質の高い授業「個を伸ばす授業」を目ざします。
「学びの杜」の教室はその取り組みにふさわしい空間デザインが工夫され、自由でクリエイティブな空間となっています。高野町は教育ビジョンとして「ふるさと教育」「英語教育」「市民性を育てる教育」を三つの柱として進めてまいります。

「ふるさと教育」では高野町の歴史や文化を知識として学ぶだけでなく、高野町で生まれ育つ意味や自身の存在などを学んで欲しいと思います。少し難しいかもしれませんが、中学生になるともう大人ですから、自身を見つめる力や考える力を養い、骨太な人になってもらえればと考えます。

次に「英語教育」では言語ツールとして他文化や多様な価値観などを学ぶため、小学校1年生から学習を始めています。また高野町は多くの外国人の皆さんが来町してくれますので好都合です。子ども達が自分のことや町のことを外国の方と英語で話し、考え方の違いなどを学んでもらいたいと考えております。先日、外国人の方とお話しする機会がありました。来町の目的や高野町の魅力を尋ねたところ、高野町にはスピリチュアル(精神性)な空気感があり、また世界遺産に住む人々とはどういう人達なのかを知りたかったそうです。子ども達には「ふるさと教育」や「英語教育」で考え、学んだことを駆使して外国の方に勇気をもって「高野町民」を伝えて欲しいと願っています。

最後に「市民性を育てる教育」です。市民性教育と聞きますとイデオロギー的な、または政治的な背景を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、高野町では「社会の構成員としての当事者意識を持ち、公共の精神に基づき社会に参画しようとする力」と定義づけています。分かりやすく言いますと小学生期から、子ども達が自身や地域の将来を創る力を養うということです。
現在の社会を見ていますと長期の不景気状態や少子高齢化などが続いていたことが原因でしょうか、政治や社会(地域)に無関心でとりわけ投票率の低さや首長、地方議会議員のなり手が不足するなど他人任せな風潮を感じるのは私だけでしょうか。幸いにも高野町ではこれまで脈々と各世代の方々が町の文化や歴史を紡いでこられています。しかし社会の見通しが難しいなか、未来の高野町を創る世代の育成を「市民性を育てる教育」を通して進めることが私達大人の責務であると考えております。子どもを子ども扱いせず、大人と子どもが一緒になって高野町の将来を語り合える場に「学びの杜」がなって欲しいと思っています。
これらの取り組みは、将来子ども達がどこに居を構えたとしても、故郷「高野町」を愛し、高野町を考え高野町を創ってくれるものと確信いたします。

さて、前述しました三つのビジョンだけで大丈夫か?基本的な教科学習は大丈夫か?というような声をお聞きすることがあります。教科学習はもちろん大切です。よく学力の習熟視点として全国学力調査(国が行う悉皆調査で都道府県等の順位を表す)が行われますが、本町では正直あまり意識はしておりません。と言いますのは母数が少ないため結果変動が大きすぎるためです。ですから高野町では児童生徒個々の習熟度や伸びを重視します。
全国学力調査などで高得点を獲得するためのテクニックがあります。しかしそれでは子ども達に本当の意味の力は根づきませんし、まず学習嫌いになってしまいます。もちろん高得点を取ることは意味もあり、子ども達も喜びますが、そのために失うことのほうが多いように思います。高野町の子ども達には地力と感性を蓄え義務教育を終えた後、自らの意志で学び、ぐんぐん伸びる大人になってもらいたいと思います。
今回は「学びの杜」や学校教育に思うことを拙筆ながら書かせていただきました。文字数の都合で学校教育を中心にした内容になりましたので、次回は社会教育について書かせていただきたいと思います。今後も引き続きお付き合いいただければ幸いです。

9月に入り夏の疲れが出やすい頃ですのでどうぞご自愛のうえお過ごしください。

教育長 西岡 敬

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