世界基準の性教育を届けよう~子どもたちの健やかな性の発育のために毎日できること~
今どきの性教育をご存知でしょうか。年間100回以上、全国の小・中学生、高校生向けに性教育の講演を行い、市内の中学校での講演も大好評な「サッコ先生」に、今話題の「包括的性教育」についてお話を伺いました。
◆「包括的性教育」でまるごと人間教育
私は性教育をしたくて産婦人科医になりました。大学5年生の時に性感染症の影響で不妊症につながるということを知り、「若い人たちに性感染症の予防法を伝えなくちゃ!」と思いました。
これまでの性教育と言えば、生殖や身体の発育の事を指してきたと思いますが、包括的性教育では、人間関係、コミュニケーション、同意について学びます。その基盤には人権とジェンダー平等があります。
ユネスコの「国際セクシュアリティー教育ガイダンス(以下ガイダンス)」は包括的性教育を学校で行えるようにしたものです。8つのキーコンセプト(下表)を4つの発達年齢段階に応じて積み重ねて学びます。
厚生労働省では、ガイダンスに沿った教材「まるっと!まなブック」を作成しています。ホームページからダウンロードすれば、学校や家庭などで自由に活用することができます。
▽国際セクシュアリティ教育ガイダンス8つのキーコンセプト
(1)人間関係
(2)価値観、人権、セクシュアリティ
(3)ジェンダーの理解
(4)暴力と安全確保
(5)健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
(6)人間のからだと発達
(7)セクシュアリティと性的行動
(8)性と生殖に関する健康
◆全国すべての学校で「生命(いのち)の安全教育」
学校では、性交については扱わないという、いわゆる「はどめ規定」があります。産婦人科医や助産師が講師として伺いますが、性教育は年に1回の特別な教育ではなく、人権やコミュニケーションは、日頃から先生と生徒の関わりの中で育まれていくものだと思います。
令和5年4月から「生命(いのち)の安全教育」が始まっています。性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないための教育です。プライベートゾーン、境界線(バウンダリー)、SNSでの性被害、デートDV、性的同意などを学びます。「性暴力とは何か」「被害を受けたあなたは悪くない」「だから大人に相談して」と繰り返し学びます。相談を受けた時にかけた言葉が、二次加害(セカンドレイプ)とならないよう、価値観をアップデートし、SOSを受け取る準備をしておく必要があります。
◆楽しくポジティブに性教育 保護者も一緒に
私は市内の中学3年生に、性の多様性・交際・性的同意・セルフプレジャー・妊娠・避妊・性感染症などについて90分の講演会を行わせていただいています。ゲームや、先生たちによるデートDVのロールプレイングなど、楽しくポジティブに学びます。保護者や地域の大人たちにも、一緒に参加していただきたいと思っています。
昔は「寝た子を起こすな」と言われていましたが、若者たちは知識を得るほど“性行動に慎重になる”と、ガイダンスに示されています。
若者を信じて、科学的な知識や選択肢を与え、18歳の時点で、自分で自分の行動を選択できるように、義務教育の中で伝えていくことが重要だと考えています。インターネットからのゆがんだ情報が先に入ってしまう前に、小学生の頃から積み重ねていきたいところです。
◆若者が性について相談できる場所を
海外では、思春期の若者が性について無料で相談できるユースクリニックというところがあります。東京都では令和4年度から「わかさぽ」という名称で始まりました。
彩の国思春期研究会では、令和5年5月から月に1回ユースクリニックを開催しています。9月にはふじみ野市主催で開催し、最新の月経グッズや世界の避妊法の展示、若者を取り巻く性教育ドラマ「17.3 about a sex」の視聴とディスカッション、男子の避妊法などのミニ講座を行いました。
性についての相談相手の1位は、女子は「母親」、男子は「誰にも相談しない」でした。男子にこそ性について堂々と相談できる場所が求められていると感じます。性別に関係なく若者の相談場所を作っていきたいです。
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