竹間沢車人形は約150年前に三芳の地に伝わりました。時代の流れで一度は衰退しますが、1972年に復活を遂げ、今年で50周年を迎えます。現在は日本に3座のみが残る車人形のひとつ、竹間沢車人形。半世紀にわたり三芳町で親しまれてきた伝統芸能、その魅力に迫ります。
■守り継がれる竹間沢車人形
竹間沢車人形は江戸時代末から明治時代の初め頃に伝わったとされ、初代座元・前田左近(さこん)さんから二代目・民部(みんぶ)さんにかけて隆盛を極めます。しかし、映画などの新しい娯楽に押されて衰退。大正10年(1921)を最後に、興行の記録が途絶えていました。
○三芳の貴重な人形芝居を、再び。
竹間沢車人形が再び脚光を浴びるのは昭和46年(1971)。県が行った調査で前田家の納戸から車人形の芝居道具が見つかったことをきっかけに、この伝統芸能を継承し、復活させようという動きが生まれました。
復活公演に名乗りを上げたのは二代目・民部さんの孫にあたる前田益夫(ますお)さんと、地元竹間沢の池上喜雄(よしお)さん。
「三芳に伝わる貴重な人形芝居を再演したい」と、車人形を演じたことがある前田近(ちかし)さん(二代目・民部さんの息子)に指導を願い猛特訓。昭和47年(1972)6月18日、200人以上の来場者の前で約50年ぶりに公演を行い、見事復活を遂げました。
○竹間沢車人形保存会
住民の手によって守り継がれた竹間沢車人形。この灯をこの先も守り続けるため、昭和50年(1975)に竹間沢車人形保存会(以下:保存会)が発足。現在は15人が所属し、毎年開催しているコピスみよし公演に向けた練習や体験教室など、車人形の魅力を伝え、保存会の仲間を増やすための活動を積極的に行っています。
■CHIKUMAZAWA KURUMANINGYO 竹間沢車人形保存会
50年の感謝を胸に。
復活から半世紀、地域で親しまれてきた車人形。
地域の伝統芸能を守る保存会のみなさんの想いに迫ります。
○車人形の操り方
首(かしら)・手:右手は遣い手の右手で持ち、左手は首と一緒に遣い手の左手で持つ。右手についたチョイを引くと手首、指が動く。左手からはひもが出ており、遣い手の右手親指に巻き付け、これを引くと手首・指が動く。
遣い手:遣い手は黒子の衣装を身に着ける。黒は観客からは見えないという約束事の元、舞台で人形を操る。
ロクロ車:桐製の箱で底には前方に2輪、後方に樽型の1輪の車が付いている。ロクロ車を遣い手の腰に紐で結び付けると、腰を動かせば前後に移動できる。向きを変える時は後方の車を軸にする。
足:人形の足のかかとにある金具を遣い手の親指に挟んで動かす。
■保存会の2人に意気込みを聞きました。
竹間沢車人形保存会
池上喜雄(よしお)さん
小澤映顕(てるあき)さん
平成14年(2002)のコピスみよし開館から毎年開催され、今年で20回目を数えるコピスみよしの竹間沢車人形公演。保存会はこの大舞台に向けて、その他の公演などの合間を縫いながら夏から稽古を始めています。
「あるだけでも、動くだけでも珍しい車人形だけど、珍しさだけじゃなく人形芝居の面白さを伝えたい」。そう話すのは復活公演から車人形を続けている保存会の池上喜雄さん。節目の公演を前に保存会のみなさんも練習に力が入ります。
会の中でも、若手の小澤映顕さんは今回が3回目の公演。「毎回の稽古が試行錯誤の連続。自分の思い通りに動かしたい、その気持ちが原動力になっています」。片時も人形を離さず、動きの確認に余念がありません。遣い手からスタッフまで、全員が一丸となるコピスみよしでの公演。ではその見どころとは何でしょう。
◆伝統の演技で過去の世界に誘う
○感情を人形に乗せて
車人形の特徴は、3人で操る文楽人形とは違い、1人で人形を操れること。また、人形自体が直接舞台を踏むため、力強い演技やリズミカルで躍動感のある演技ができるのも車人形の強味です。
「感情を人形の動きに乗せて表現するので、震える、顔を伏せるなど、動きにどんな感情が乗っているのかにも注目して欲しい」。と池上さんは公演の見どころを語ります。
また、公演では人形の演技だけでなく、三味線の演奏に乗せて台詞や場面描写を歌うように語る「説経節」も必見、必聴。車人形が伝わった当初と同じように、説経節に合わせて人形が動く姿は、見る人を過去の世界に誘います。
○魅力を伝えたい
50周年・20回目という節目の公演に向け、「これまで続けてこられたのはこの人形芝居を演じるのが楽しかったから。この魅力が少しでも多くの人に伝わっていれば嬉しい」と50年を振り返る池上さん。「お客さんあっての公演なので、今まで見に来てもらえたことに感謝したい」と続けます。
12月3日(日)のコピスみよし公演。保存会はこの50年間の感謝を胸に、車人形の魅力を演技で届けます。
■説経節、気軽に聞いて
私の師匠が竹間沢車人形の説経節をやっていたつながりで、私がやらせてもらってから早いもので30年が経ちます。
説経節というと難しくとらえる人もいるかもしれませんが、ぜひ気軽に聞いてください。
難しい言葉もそこまで多くないですし、人形のセリフごとに声色を替えたり、アクセントをつけるので、公演では説経節にも注目して欲しいです。
そしてこれを機会に説経節の舞台も聞きに来てくれると嬉しいですね。
説経節 三代目 若松若太夫(わかたゆう)さん
■みよし芸術祭2023を締めくくる
復活公演から50周年。再び魂が人形に宿る。
○第20回 竹間沢車人形公演
12月3日(日)13:00開場/13:30開演
演目:
仮名手本忠臣蔵、蘆屋道満大内鑑
寿式三番叟、車人形教室
出演:
竹間沢車人形保存/三代目若松若太夫(説教節)
竹本越孝(義太夫)/鶴澤駒治(三味線)
会場:三芳町文化会館 コピスみよしホール
料金:大人1,200円 小・中学生300円(全席自由)
※未就学児の同伴、入場はご遠慮ください。
チケット取り扱い:
コピスみよし【電話】049-259-3211
歴史民俗資料館【電話】049-258-6655
中央図書館【電話】049-258-6464
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