■文化財は語る 第十二回 屋敷林の樹木(2)
屋敷林には、防風効果の高いケヤキとカシ、さらに竹やスギ、ヒノキが植えられることが多い事を紹介しましたが、これらの樹木は単に防風のためだけに植えられたのではありません。竹は籠をはじめとする農具の材料になり、スギやヒノキの枯れ枝は焚き付けに利用されました。
屋敷林の樹木は防風や防火のためだけではなく、様々な用材として利用できる樹種が選ばれているのです。ケヤキは、大木になると家の建て替え材料となると共に、建築材・舟材・臼材として高く売れたといいます。カシは、硬いことから荷車や鋤(すき)鋤(すき)・鍬(くわ)鍬(くわ)の柄として使われました。スギやヒノキも建築用材として、自宅での利用や売るために植えられました。
家を建てる際には「ジボク(地元で育った木)が良い」といわれ、屋敷林の樹木は自宅を建て替える際に使われることもあります。しかし、「屋敷内の木は家に余程のことがない限り切るものではない」ともいわれ、屋敷内の樹木は、先祖が子孫に何か困ったことが起きたときのために植えたものといわれます。事実、戦争に行った方から「自分に万が一のことがあっても家族が困らないよう招集前に屋敷林のケヤキを売り、借財を完済してから戦地に向かった。このときほど先祖に感謝したことはない。無事に帰還してまず行ったのが、子孫のためにケヤキの苗木を植えたことだ。」と聞いています。
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