大宮台地の北部に位置する北本市は、とても遺跡の多いまち。人々は旧石器時代からこの地に暮らし、縄文時代には各所でムラが営まれました。中でもデーノタメ遺跡は全国に知られた縄文時代の遺跡です。全5回の連載で、国指定史跡を目指すこの遺跡の魅力に迫ります。
■『赤い』土器が出土した
低地の調査では、泥炭層を掘り始めるとすぐに縄文土器が姿を現わしました。これらは集落で壊れた土器を低地へ運び、廃棄したものと思われます。
驚いたのは、土器の中に赤や黒で彩られた鮮やかな土器を含んでいたことです。これらは漆(※)を塗った土器で、その多くは浅鉢形という丈の低い土器でした。
縄文土器といえば、日常の煮炊きに使う深鉢形が一般的ですが、漆を塗った土器は、儀礼の際に神々へ捧げる特別な土器に限られていたようです。
■謎めいた漆の品
漆を塗った縄文時代中期の土器は、黒色の漆を下地に、その上に赤色の漆を塗って文様を描いています。赤い色は弁柄という顔料ですが、縄文後期の腕輪片や糸玉片には、鮮やかな水銀朱が用いられていました。縄文人はどうやってこれらの顔料を手に入れたのでしょう。
また、腕輪や木製漆器の装飾には、明らかに何かをはめ込んだ痕が残っていました。貝殻の一部らしいと推測していますが、ぜひ明らかにしたいものです。
■ウルシ栽培の痕跡
デーノタメ遺跡では、(1)漆製品のほか、(2)ウルシの花粉、(3)ウルシの木材、(4)パレットや磨石などの工作具が確認されています。このため、この集落ではウルシの林を管理し、夏季にはウルシ液を採取・精製し、顔料を混ぜて漆製品を作っていたのでしょう。
英語で小文字の「japan」は漆を意味します。漆はまさに日本の基層文化の一つですが、それが5千年前の足元の遺跡に眠っていたのです。
漆はデーノタメ遺跡の大きな特色であり、魅力なのです。
※文化としての漆は漢字、植物としてのウルシは片仮名で表記しています。
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