各隊員の活動を詳しくお伝えする地域おこし協力隊通信。第12回は掛川安純さんの活動を紹介します。
こんにちは、掛川安純です。東京都八王子市出身です。子どもの頃から遊び場は原っぱや雑木林でした。以降、「もっと自然が身近にあっていい」との気持ちが続いています。前職の環境関係の仕事の中で自然破壊の現状を目の当たりにし、経済活動としての農業と自然環境の保全が両立できるあり方を模索しています。前回は、農薬・化学肥料・除草剤を使用せず、微生物を中心とした栽培のあり方を紹介させていただきました。今回は、「どうしたら気候変動に強い作物を作れるか」という問題意識を元に、これまでの活動の変遷を紹介させていただきます。
まず、なるべく自然の力、特に大地の力によって育つ健康で強い野菜づくりが基本となります。このことが気候変動に強い野菜づくりと大きく関連します。土づくりが重要になりますが、肥料によって植物の栄養を増やすという発想ではありません。植物の根と共生関係を結ぶ微生物に活躍してもらうため、微生物に餌を与えるという発想になります。共生関係の中では、微生物と植物が栄養やエネルギーの交換をしています。この時、微生物の餌として窒素等の多い資材を与えすぎると、意に反して植物が吸収しメタボになってしまいます。人間と同様、メタボ野菜は不健康で病虫害を受けやすくなり、気候の変化にも弱いと考えられます。対策として、炭素比(C/N比)が高く糸状菌などの微生物による分解が遅くジワジワと進む自然資材を畑に与えます。小鹿野には、竹や枯れた木、廃菌床などC/N比の高い資源が豊富です。地域の特性に合った地域資源の利用が農業の発展に大切と感じます。
また、育苗は気候変動にも一定の効果があると思われます。活動予算の制約上、小さな菜園ハウスしか導入できていませんが、育苗目的であればそれほど面積を必要としません。セルトレイなどは乾きやすいので、水やりなど日々の管理に手間はかかりますが、季節の変化に合わせて換気や遮光、保温などの工夫をすれば、多少の気候変化にも対応できると感じています。特に、昨年のように小雨や残暑など極端な気候の年にも、発芽に必要な環境をコントロールしやすいというメリットがあります。そのため、通常は直播するホウレンソウや小松菜などの葉物も積極的に育苗しています。
さらに、定植後の苗には、基本的に水は一度もやりません。状況をみながら、活着するまでの間だけ必要に応じて水をやります。逆にいえば、水やりをしなくとも、植物自身が根を伸ばし水を取ってこられるような、強い苗づくりと畑の土壌環境づくりを目指しています。苗の肥大は期待できませんが、化学肥料ではなく、腐葉土など窒素等が少ない自然資材で育てた苗は、活着後は水をやらなくともスクスクと健康に育ってくれます。
種は固定種とF1種の両方を使っていますが、固定種には気候変動に強い野菜づくりが期待されます。固定種は、育った野菜から種を採取し翌年も蒔いて再び種を取ります。毎年種を継いで栽培していくと、植物はその年ごとの気候を記憶し、やがてその土地の環境に適応していくと言われています。
今年度は協力隊としての最終年度となります。気候変動への適応を含めて、中長期の視点から就農を目指いよいよ3年目となる本年は、町民のみなさまへの感謝をします。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>