■オーガニックファーム所沢農人(のうと)・農家/サステナアワード2023 地域資源循環賞受賞 川瀬 悟(かわせ さとる)さん(市内在勤)
年に150品目以上を有機農法で生産している。生野菜好きで、最も感動したのは春菊のサラダ。珍しい野菜のレシピをYouTubeで紹介することも。事務仕事の合間にはクラシック音楽を聴く。10月8日のとことこ市(本紙10面参照)、26日・27日の農業祭(本紙4面参照)で出店予定。
◇「豊かな食×問題解決」で新たな魅力・価値を
残暑を吹き飛ばすような爽やかな笑顔で現れたのは、今年1月に農林水産省サステナアワードを受賞した川瀬悟(かわせさとる)さんだ。
幼少期から山や森、川に入って遊ぶことが日常で、いつも身近に生物がいた川瀬さん。大学では森林・生物を専攻し、大学院では生態学、緑地の変化を研究した。卒業後は物流業界に興味を持ち、約10年間、会社員として働くことに。キャリアを積む中で、東北や熊本での地震対応などの大任も経験した。やりがいを感じていたが、大仕事が落ち着いた時、「自分が今一番やりたいことは何だろう」と、一度立ち止まってみる。
頭の中をフラットにして浮かんだのは野菜作りのこと。小さい頃から手伝っていた両親の家庭菜園や、大学生から社会人の間も続けていた農作業体験。「やりたいことをやらない方が辛い」。生物や畑と寄り添ってきた川瀬さんにとって、有機農業を選ぶのは自然なことだった。
退職後、新規就農の研修制度を修了し、2018年に都心へのアクセスも良く、野菜作りに最適な所沢で就農することに。
オーガニックと聞くと響きは良いが、畑では苦労の連続だ。各宅に配送する箱の中身を想像して、おいしい野菜、彩りが美しい野菜…と、品目を決めていく。珍しいものは自身で種から苗を作る段階から行うが、うまく育たないことも。大半の人はそこで意気消沈するに違いない。否、川瀬さんは違う。「人よりも失敗は多い方」と言うものの、根っからの研究肌で、沈む間なく改善策を考える。「考えることが好きだし、苦労する先に達成感がある」。野菜も生きている。コンディションによって味が変わるところも、難しく、面白くもある野菜作りの魅力だ。
現在、川瀬さんは次のステップに進んでいる。「所沢市はオーガニックビレッジ宣言に向けて取り組んでいる。自分も野菜作りを主軸としつつも、農家の立場から、環境について伝えていきたい」。8月には大学院時代を過ごした北海道でエゾジカの急増による被害の拡大に着目し、ジビエのクラウドファンディングに挑戦した。ネガティブな問題も、食として提供することで、命を無駄にせず、我々の食生活も豊かになる。そんな「環境や生物と、人が関わることで循環する社会」を川瀬さんは目指している。「環境問題は難しく考えられがちだが、日常生活に取り入れられることも多い」と、その活動は、家庭でのコンポスト推進や講演会の開催など、さまざまだ。
「農と人が育む持続可能な未来」のために「やりたいこと」を着実に実現していく川瀬さんから、今後も目が離せない。
(取材:齋藤)
〔memo〕
川瀬さんの詳細はこちら
・オーガニックファーム所沢農人HP
・受賞動画「農と人が育む持続可能な未来」
※二次元コードは本紙をご覧ください。
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