■腎臓の機能評価について
◇はじめに
慢性腎臓病(Chronic(クロック)Kidney(キドニー)Disease(ディジーズ))は、何らかの原因で腎機能障害が3ヶ月以上続く状態のことを指します。日本のCKD患者さんは1,330万人(日本人口の約10%)と言われ、現在も増加傾向にあります。なぜCKDが増えているのでしょうか。考えられる原因は2点あります。1点目は日本人の平均寿命が延びたことです。個人差はありますが、腎臓も長く年を重ねることで疲弊してCKDとなる方がいます。2点目は健康診断などで腎機能の評価が詳しく行われるようになったことです。これまで腎機能評価には尿検査のみということが多かったのですが、ここ数年で血液検査による評価もされるようになりました。そのためこれまで見逃されてきた方がCKDと診断されています。CKD予防のためには、早期腎機能評価が必要です。
◇腎臓の働き
腎臓は腰のあたりに左右1つずつあります。左右の腎臓にはそれぞれ約100万個の「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる、細い血管が「鞠(まり)状」になった器官が存在します。全身を巡った血液は、身体に必要なもの(蛋白(たんぱく)質や赤血球など)や、不要なもの(老廃物)を含みながらこの糸球体に流れて来ます。そして糸球体は必要なものは身体に戻し、不要なものは尿に出す「仕分け」作業を行います。
通常腎機能障害は、身体に必要なものが尿に漏れ出すところから発覚します。これが尿蛋白、尿潜血です。
◇尿蛋白
尿蛋白は主に次の原因で出現します。(1)生活習慣病、(2)糸球体腎炎、(3)疲労、不規則な生活、(4)起立性蛋白尿(特に若い方)
健康診断などで実施するのは検査紙で行う定性検査です。結果は(+)と出ます。しかし大切なのは1日に出る蛋白尿量です。正確に計測するには1日尿を貯める必要がありますが、外来で尿定量検査を行えば、おおよその1日尿蛋白量が分かります。その量によって、さらに詳しい検査が必要か判断します。尿蛋白陽性が出た場合、定量検査を受けていただくことが重要です。
◇尿潜血
尿潜血は主に次の原因で出現します。(1)糸球体腎炎、(2)膀胱(ぼうこう)・尿管・前立腺の炎症もしくは疾患、(3)尿路結石、(4)その他(激しい運動など)
尿蛋白同様、検査紙による定性検査です。潜血(+)という結果が出た場合、さらに尿沈渣(ちんさ)という検査をする必要があります。この検査の主な目的は、尿を顕微鏡で観察し、尿潜血陽性の原因が糸球体(腎臓)異常のためなのか、糸球体異常以外のためなのかを判断することです。以上の理由から尿検査は早期腎機能評価に有用です。さらに腎機能の評価、つまり糸球体の「仕分け」作業の評価はeGFRでも判断されます。
◇eGFR
eGFR(推定糸球体濾(ろ)過量)とは糸球体が「仕分け」をして、どれくらいの割合で老廃物を尿に出しているかを判定する指標です。通常100%のところ60%を切るとCKDとされます。
eGFRは血中クレアチニン濃度(Cre)と年齢・性別を、決められた式に当て込めて算出されます。Creとは筋肉を使用した後に生じる老廃物です。一般的な筋肉量の違いから、血液検査では男性で0.8~1.2mg/dl、女性で0.6~0.9mg/dlが標準とされています。
Cre(老廃物)が上昇するとeGFRは低下します。しかし前述のようにCreは筋肉量(体格差)によって数値が変わってきます。eGFRの利点は簡便に腎機能評価が出来るところですが、体格差を考慮していないため、実は腎機能が正常である人をCKDとしてしまう欠点があります。また、通常eGFRは1回の検査だけではなく、数年かけて検査を行い、その推移を見て個々の腎機能を評価するために用いられます。
◇おわりに
検査で尿異常が認められたり、eGFRが60を切っていたりすると不安になる方が多いと思います。しかし、医療機関で詳細な検査を行い、しっかりとした腎臓の現状を把握し理解していくことが大切です。
朝霞地区医師会 明石 真和(あかし まさかず)
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