■箭弓稲荷神社が国指定重要文化財へ
令和6年1月19日「箭弓稲荷神社本殿(ほんでん)・幣殿(へいでん)・拝殿(はいでん)」が重要文化財に指定されました。市における重要文化財の指定は65年ぶりとなります。今回は箭弓稲荷神社をはじめ、市内の国指定重要文化財を紹介します。
○指定文化財とは
指定文化財には国、県、市それぞれの指定があり、その重要度と範囲に応じて、例えば「国にとって重要なもの」が国指定の文化財となります。現在、市内には4件の国指定、17件の県指定、107件の市指定文化財があります。
国指定文化財は「有形文化財」、「無形文化財」、「民俗文化財」、「記念物」、「文化的景観」、「伝統的建造物群」の6つの類型に分けられ、このほかに「文化財の保存技術」といった区分もあります。
○文化財保護法による指定文化財の体系図
○箭弓稲荷神社 本殿・幣殿・拝殿(建造物)令和6年1月19日指定
箭弓稲荷神社は、和銅(わどう)5(712)年に創建した神社で、五穀豊穣、家内安全、商売繁盛の守り神として多くの信仰を集め「やきゅうさま」と親しまれてきました。
現在の社殿は、本殿と拝殿の二棟を幣殿でつないだ権現造で、江戸時代後期の同様式としては、関東最大級の規模です。
文化年間(ぶんかねんかん)(1804~1818年)に造営が計画され、天保(てんぽう)6(1835)年の棟札(むなふだ)(建物の建築・修理の記念や記録として、棟木(むなぎ)や梁(はり)など建物内部の高所に取りつけた札)2枚から本殿と幣殿は同年に上棟し、天保11(1840)年までに拝殿が竣工したと考えられます。
また別の棟札から、嘉永(かえい)5(1852)年に本殿屋根の箱棟(はこむね)を銅板包(どうばんつつみ)とし、安政(あんせい)5(1858)年に拝殿を杮葺(こけらぶき)から瓦葺(かわらぶき)とする改修を行ったことが判明しています。
社殿造営工事の精算書にあたる「箭弓稲荷社再建立普請諸入用帳(やきゅういなりしゃさいこんりゅうぶしんしょいりようちょう)」から、総工費は5688両銀9匁(もんめ)の費用を要したことが分かります。当時の米価を参考に1両の価値を6万円とすると、総額約3億4千2百万円の大事業で、箭弓稲荷神社の信仰の厚さを物語ります。
本殿の北に位置する元宮(もとみや)は、享保(きょうほう)年間(1716~1735年)頃に建立されたと推定される境内で最も古い建造物です。
今回、意匠的に優秀なもので、流派的又は地方的特色において顕著なものであり、関東の江戸時代後期を代表する神社建築として国指定重要文化財になりました。また棟札3枚、古文書1冊、元宮1棟についても、神社建築の経緯が分かる資料として併せて指定されました。
所在地:箭弓町2-5-14
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