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特集 市内の国指定重要文化財(2)

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埼玉県東松山市

○箭弓稲荷神社の彫刻
江戸時代の社寺建築のひとつの特徴として、社殿に施された彫刻があり、龍や鳳凰(ほうおう)といった霊獣(れいじゅう)のほか、草花や木・波などの自然物、日本神話や故事成語などを題材としています。
箭弓稲荷神社外観の随所にも素木(しらき)の精緻(せいち)な彫刻が見られ、特に本殿の妻飾(つまかざり)(建物側面の屋根付近の三角形の部分)は、その大きさに加え、動植物や波を象かたどった彫刻で埋め尽くされており圧巻です。一方で本殿内部は絢爛豪華(けんらんごうか)な極彩色(ごくさいしき)を施しており、外観と内部が好対照をなしています。
箭弓稲荷神社の彫刻は、大里郡川原明戸村(おおさとぐんかわらあけとむら)(現・熊谷市)の飯田仙之助(いいだせんのすけ)が手掛けました。宝暦(ほうれき)10(1760)年に再建された国宝・妻沼聖天堂(熊谷市)の彫刻棟梁(ちょうこくとうりょう)を担った宮大工、石原吟八郎(いしはらぎんぱちろう)の孫弟子にあたるのが仙之助であり、日光東照宮に関わった上州彫物大工の系譜(けいふ)を引いた人物です。
仙之助が手掛けた彫刻の一例として、箭弓稲荷神社本殿の背面に、ひと際目立つ大羽目彫刻(おおばめちょうこく)「仙人の烏鷺(うろ)」があります。「烏鷺」とは、烏(からす)と鷺(さぎ)のことで、それぞれを黒石と白石に見立てた、囲碁の別称です。碁を打つ仙人の傍らにいるきこりは対局を楽しんでいるようにみえますが、実はその手にもっている斧の柄が腐るほど時間が経ってしまっている、という場面です。仙人の悠久(ゆうきゅう)の時間に対し、人間が過ごす時間の短さを戒(いまし)める内容となっています。
拝殿琵琶板彫刻(びわいたちょうこく)には、「名刀小狐丸誕生伝承(めいとうこぎつねまるたんじょうでんしょう)」が彫られています。平安時代、66代一条天皇が三条小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)に作刀を命じますが、宗近は満足のいく刀を作ることができずに困り果てていました。そこで、氏神である稲荷明神(いなりみょうじん)に詣でて祈願しようとしたところ、宗近の前に童子(どうじ)が現れます。童子は稲荷明神が化身した姿で、ともに相づちを打つことで、依頼に見合う太刀(たち)が完成しました。宗近は稲荷明神に感謝し、太刀に「小狐丸」と名付けたという逸話に由来する彫刻です。

○箭弓稲荷神社にあるその他の文化財
神社にはこのほか、天保7(1836)年に建立された「箭弓稲荷神社手水舎付手水鉢(やきゅういなりじんじゃてみずやつけてみずばち)」(有形文化財・建造物)や、主に江戸時代に制作された「箭弓稲荷神社の絵馬」(有形文化財・絵画)がそれぞれ市指定文化財になっています。

○社会教育講座「国指定重要文化財・箭弓稲荷神社を知ろう」
日時:6月6日(木)午前10時~11時40分(受付午前9時40分から)
場所:総合会館4階多目的ホール
対象:市内在住・在勤・在学の人
定員:60人(申込順) 
内容:国指定重要文化財に指定された箭弓稲荷神社の歴史的価値や特徴などの講座を行います。調査研究を行った、ものつくり大学横山晋一(よこやましんいち)教授が建築物・彫刻から歴史を読み解きます。
持ち物・必要なもの:筆記用具

申込み・問合せ:5月16日(木)~28日(火)に電話又は電子申請で生涯学習課へ。
【電話】21-1431【FAX】23-2239

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