■認知症ケア
認知症看護特定認定看護師 新井淳子(あらいじゅんこ)
認知症看護認定看護師 矢口美和(やぐちみわ)
“加齢による物忘れ”と“認知症の可能性がある物忘れ”の違いをご存じでしょうか?
「昨日、食べた夕飯のメニューは思い出せなくても、夕飯を食べたこと自体を覚えていれば“加齢による物忘れ”」「夕飯を食べたこと自体を忘れてしまう場合は“認知症の可能性がある物忘れ”」と言われています。様々な脳の病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、経験した出来事をすっかり忘れてしまうのです。
自分自身やご家族に“認知症の可能性がある物忘れ”が見られたときには、まず、かかりつけ医に相談しましょう。根本治療が確立されていないアルツハイマー型認知症などの中枢神経変性疾患においても、早い段階で相談することはとても重要なことと言えます。それは、日常生活に必要な機能を維持するための運動や認知機能が維持・改善されるような個人に合わせた生活指導を早期に取り入れることで、認知機能障害の進行を遅らせることにもつながるからです。認知症の中には、治る認知症もあります。具体的には、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などです。いずれにしても、早期に病院を受診することは、原因疾患を早い段階で特定することになり、適切な治療や対処法を知るためにとても大切です。
病院等における認知症の患者さんの治療に当たっては、多職種のスタッフが関わります。当院の場合では、認知症ケアサポートチームを組織し「認知症による行動・心理症状や意思疎通の困難さが見られ、身体疾患の治療への影響が見込まれる患者さんに対し、多職種が対応することで、認知症の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられること」を目的として活動しています。
認知症の方は、様々なことがわからなくなっていく不安や、今までできていたことができなくなっていく不安を抱えながら生活しています。認知症の方が住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けることができるように、患者さんを様々な職種の視点から理解し、連携して支援を考えていくことが大切と考えます。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>