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特集 (黒浜沼―守っていきたい緑がある―)

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埼玉県蓮田市

蓮田市が誇る豊かな自然は先人たちが私たちへ残した宝物です。世界中で環境の悪化が伝えられる今、あらためて蓮田市を代表する自然、黒浜沼のことを見つめ直します。

都心から約40km圏内にありながら豊かな自然に恵まれた、利便性と居住性を兼ね備えるまち、蓮田。そんな蓮田市の代表的な自然の1つに黒浜沼があります。

黒浜沼は元荒川や旧日川が運んできた土砂にせき止められて形成されたと考えられています。もともとは1つの大きな沼でしたが、江戸時代前期の寛永年間(1624〜1644年)に、沼の中に堤を築いて往来の道を造ったことで、上沼と下沼の2つの沼になりました。

沼周辺に広がる水田やヨシ原からなる湿地は野草の生育にとって優れた環境で250種以上が確認されています。中には絶滅危惧種であるジョウロウスゲやナガボノワレモコウ、ノウルシなどの貴重な種も自生しています。また、ハンノキやヤナギなど水辺に育ちやすい種をはじめとして多くの樹木も見ることができ、多様性に富む生態系が維持されています。

この多様な環境は植物だけでなく、鳥や昆虫にとっても暮らしやすい場所となっています。水辺や草地、林などを好む野鳥が飛来し、県内で確認された約330種のうち、沼周辺でも確認されたのは約150種。昆虫類ではトンボの種類が多く、ホソミオツネントンボなど38種が確認されています。

近年、地球温暖化や自然環境の悪化が野生生物への深刻な影響与えていますが、黒浜沼も例外ではありません。さいたま緑のトラスト保全第11号地に指定された15年前と比べ、周囲の水田が減ったことで湿地の乾燥が進んでいます。乾燥に強い外来種などが増える一方で、在来種の湿性植物は数を減らしています。沼周辺の環境が変わればそこに暮らす生物にも影響を与え、生態系の保全は難しいものとなります。

黒浜沼とその周辺の自然環境。身近で当たり前な存在に感じるこの環境は、先人たちから引き継がれ、現在を生きる私たちが未来の世代に継承していくべき蓮田市の宝です。この宝を次の世代に引き継ぐため、私たちができることを考えてみませんか。

■貴重な自然環境により国と県から3種の選定を受けています
○自然環境保全地域
昭和54年に、優れた天然林や特異な地形・地質、貴重な動植物の自生地や生息地などの良好な自然環境を保全するための自然環境保全地域に、上沼と下沼ともに県から指定されました。県内で16か所指定されていますが、都市化の進んでいる県南東部では唯一の地域です。

○しかさいたま緑のトラスト保全第11号地
募った寄付を資金として、埼玉の優れた自然や貴重な歴史的環境を財産として保全し、次世代に引き継いでいく「さいたま緑のトラスト運動」。現在は県内14か所が指定されており、上沼周辺は平成21年に第11号地として取得されています。

○生物多様性保全上重要な里地里山
平成27年に、谷地沼として特徴的な生態系が維持されていることから「黒浜沼(上沼・下沼)と周辺湿地・ヨシ原」が環境省から選定されました。全国で500か所、県内で11か所が選定を受けています。

■NPO法人黒浜沼周辺の自然を大切にする会
会長 瀬口宏一郎さん
副会長 田中作彌さん
貴重な自然と豊かな生態系を残す黒浜沼。この環境を守り、未来に残そうと活動する人たちがいます。NPO法人黒浜沼周辺の自然を大切にする会。黒浜沼周辺の環境保全や小・中学生への環境学習支援を行っています。「小さい頃から自然が大好きで、退職を機に自然に関わることがしたいと思って会に参加しました」と話す瀬口さんと田中さん。湿地の生態系維持のため、オオブタクサなどの繁殖力の強い外来種の駆除や増えすぎた在来種の刈り取り、周辺の清掃活動を月に数回行っています。瀬口さんは「放っておくと繁殖力の強い植物ばかりになって、希少種はすぐに全滅してしまいます。夏場には厳しい作業ですが楽しみながら活動しています。興味があるかたは参加してみてほしいです」と話します。

○夏夜を彩るホタルの光
平成11年からはホタルの里として、沼の周辺に水場を造成し、個体数の減ったヘイケボタルの育成に取り組んでいます。ヘイケボタルは県の準絶滅危惧種に指定されていますが、ホタルの里ではホタルが戻ってきています。「夏の夜には多くの人が見に来てくれます。ホタルをきっかけに黒浜沼に注目してもらえたらうれしいです」と田中さん。水場では子どもたちへの環境学習支援としてザリガニ釣りも行われています。「ほんとうは全て駆除したいですが、子どもたちが楽しそうに釣るので」と笑顔で教えてくれました。

○沼の今と未来
沼周辺では水田が減ったことで湿地が乾燥してきています。トンボも昔ほどは見られなくなり、水田周辺に生える野草で準絶滅危惧種のヒメミズワラビは極めて少なくなってきているそうです。しかし、沼を取り巻く環境は変わっていくものだと瀬口さんは言います。「環境が変わったなら変化に合わせて維持していくことが必要だと考えています。自分たちでできることを行い、守れるものをたいせつにしていきたいです」と語りました。

○ひとりひとりができること
はるか昔から蓮田市と共にあった黒浜沼。この身近であたりまえな私たちの宝を未来へつなげるため、ひとりひとりの自然を思う心がなくてはなりません。まずは、直接足を運んでみてください。都市近郊では他に見ることができない豊かな自然が待っています。

○日本野鳥の会 田中幸男さん
30年前に野鳥観察を始め、野鳥を通じて黒浜沼の自然を伝える活動をしてきました。黒浜沼は県内でも有数のバードウォッチングのスポットで、食物連鎖の頂点に君臨し、豊かな生態系の指標とされる猛禽類も確認できます。野鳥たちが安心して暮らせる多様な環境をたいせつにして、未来へつないでいきたいです。

問合せ:みどり環境課公園緑地担当【電話】048-768-3111(内線)223

お問い合わせ
所属課室:広報広聴課シティセールス担当
埼玉県蓮田市大字黒浜2799番地1
電話番号:048-768-3111
内線:215

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