毎年11月に開催される飯能まつりでは、11か町の山車(だし)がまちなかを巡行します。そのうち、河原町山車(かわらまちだし)、二丁目山車(にちょうめだし)、原町山車人形(はらまちだしにんぎょう)「神武天皇(じんむてんのう)」は飯能市指定有形民俗文化財に指定されています。今回は、この3つの飯能市指定有形民俗文化財について紹介します。
■河原町山車(本紙表紙写真)
江戸の天下祭で引き回されていた山車の様式をもとに作られた江戸型人形山車形式で、須佐之男命(すさのおのみこと)の人形を飾っています。もともとは、明治時代後期に静岡県静岡市浅間神社(せんげんじんじゃ)祭礼用に建造されたもので、その後、河原町が取得しました。
前部がお囃子(はやし)の舞台、後部が人形を飾る部位になっています。前部は、床上(しょうじょう)に黒漆塗(くろうるしぬ)りの高欄(こうらん)、上部には雲間(くもま)に飛鶴(ひかく)の彫刻を配した欄間(らんま)が付いています。後部には床上に黒漆塗りの高欄が、上段に四神(しじん)の彫刻付の三味線胴(しゃみせんどう)(人形が乗る台の部分)に朱漆塗(しゅうるしぬ)りの高欄が付いています。後部の緋色(ひいろ)と浅黄色の幕には大蛇(だいじゃ)と瓶(びん)がそれぞれ刺繍され、須佐之男命の人形と合わせて、八岐大蛇(やまたのおろち)退治の神話を表現しています。
人形と後部上段および緋色の幕は、滑車の操作によって上下する仕掛けになっています。
■二丁目山車
明治時代前期に旧砂川村五番組(きゅうすながわむらごばんぐみ)(現立川市)で建造され、その後、二丁目が取得したものです。一時期、平屋根に改修されましたが、平成22年度から24年度にかけての復原修理で、屋根中央部に一本柱を立ち上げ、先端の台座に人形を飾る八王子型人形山車(はちおうじがたにんぎょうだし)という建造当初の姿に復されました。
鶴・亀・竜・鳳凰(ほうおう)など縁起が良いとされている獣や浦島太郎と竜宮の乙姫、金太郎と山姥(やまんば)といったおとぎ話を題材にした彫刻は、江戸後藤派系彫刻師の手によるものとされ、現存する南関東の山車彫刻のなかでも優れた作品の一つに数えられています。
■原町山車人形「神武天皇」
江戸型人形山車の山車人形で最も多い一人立ち形式の山車人形です。弓に止まった金鵄(きんし)が発する光で敵の眼をくらませて勝利したという『日本書紀』の記述を題材にしています。像高185センチメートル、肩幅38センチメートル、最大横幅は106センチメートルです。
江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した人形師・三代目原舟月(はらしゅうげつ)によって明治時代中期に制作されたもので、全体がほぼ制作当初の状態を保持しており、当時の制作技法を良く伝えています。また、三代目原舟月の現存作品の中でも完成度が高いこと、人形の制作状況について記した直筆書状とともに伝わっていることから、大変貴重な山車人形といえます。
■そのほかの飯能まつりに関連する文化財情報
令和6年6月に飯能市指定無形民俗文化財に指定された飯能の底抜け屋台行事のうち、一部の団体が飯能まつり開催日1日目にまちなかを巡行します。詳細は、飯能市ホームページをご覧ください。
■令和6年飯能まつり
開催日:11月
・2日(土)12:00~21:00
・3日(日・祝)9:00~21:00
内容:
・1日目…パレード、おまつり特設ステージ、よさこい、おまつりマルシェ、乗馬体験、底抜け屋台の巡行・引き合わせ ほか
・2日目…山車の巡行・引き合わせ、居囃子、獅子舞 ほか
※詳細は、本紙またはPDF版をご覧ください。
問い合わせ:
〔飯能まつりに関すること〕飯能まつり協賛会事務局(観光・エコツーリズム課内)【電話】973-2124【FAX】974-6737【メール】kanko@city.hanno.lg.jp
〔文化財に関すること〕生涯学習課【電話】973-3681【FAX】971-2393【メール】syogai@city.hanno.lg.jp
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