■中山氏(なかやまし)・黒田氏(くろだし)ゆかりの文化財
▽丹党(たんとう)の末裔、中山氏ゆかりの文化財
中山氏は武蔵七党(むさししちとう)と総称される中小規模の武士団の一つ、丹党の武士、加治氏(かじし)の子孫です。中山氏は現在の中山地内および飯能地内を拠点としていました。
中山地内には中山家範館跡(なかやまいえのりやかたあと)のほか、智観寺の境内に智観寺板石塔婆(ちかんじいたいしとうば)、中山信吉墓(なかやまのぶよしはか)、中山信吉木碑(なかやまのぶよしもくひ)があります。中山氏の中山家範(なかやまいえのり)の子の一人、信吉(のぶよし)は現在の茨城県域などの一部に相当する水戸藩の付家老(つけがろう)に出世しました。智観寺は信吉系統の中山家の菩提寺で、墓所とゆかりの寺宝が数多くあります。
天覧山麓の能仁寺は中山氏が開いた寺院です。中山氏の本家である家範の子の一人、照守(てるもり)の系統の菩提寺で、能仁寺中山勘解由三代墓(のうにんじなかやまかげゆさんだいのはか)があります。
▽黒田氏ゆかりの文化財
中山照守の子孫である直邦(なおくに)は、母方の祖父、現在の群馬県域などの一部に相当する館林藩(たてばやしはん)の家老黒田用綱(くろだもちつな)の養子となり、黒田姓を名乗りました。五代将軍徳川綱吉(とくがわつなよし)に重用され、旗本の三男に生まれながら、ついには上野国沼田藩主(こうずけのくにぬまたはんしゅ)、三万石の大名となりました。
直邦は能仁寺の再興に尽力し、後に黒田家も能仁寺を菩提寺とし墓所を造営します。黒田直邦(くろだなおくに)の墓(はか)は多峯主山頂直下にあり、黒田領となった父方の中山氏伝来の地を見守るかのようです。
諏訪八幡神社は直邦の先祖、加治氏が造営した神社です。現在その境内にある丹生(たんしょう)神社本殿は、直邦が能仁寺境内に造立したものを後に移設しました。
■〔略年表〕飯能市と中山氏・黒田氏
戦国時代に活躍した郷土の武人、中山氏とその子孫の黒田氏について、関連する文化財・史跡などを交えて紹介する略年表です。
・13世紀
現在の関東地方で活躍した加治助季(かじすけすえ)が父母の追善供養(ついぜんくよう)として、先祖ゆかりの智観寺に板石塔婆(いたいしとうば)を建立する。
→(1)埼玉県指定有形文化財 考古資料 智観寺板石塔婆(ちかんじいたいしとうば)
・16世紀
助季の子孫、家勝(いえかつ)の代に中山姓(なかやませい)を名乗る。その息子の一人、家範(いえのり)が能仁寺を創建。
同じ頃に智観寺の東側に館を構える。
→(2)埼玉県指定記念物 旧跡 中山家範館跡(なかやまいえのりやかたあと)
・天正(てんしょう)18(1590)年
後北条氏(ごほうじょうし)に仕えた家範(いえのり)は、自身が守った八王子城(現在の東京都八王子市内)の落城に伴い自刃する。それを受けて家範の子、照守(てるもり)と信吉(のぶよし)は現在の飯能市域に身を潜める。その後、家範の功績を称えた徳川家康が二人を仕えさせる。
・慶長(けいちょう)12(1607)年
家康の子の一人、頼房(よりふさ)が水戸25万石の領主となることに伴い、家老等を勤めた信吉が水戸藩の付家老(つけがろう)を任じられる。
→友好交流都市 茨城県高萩市との交流
・寛永(かんえい)21(1644)年
信吉の子の一人、信正(のぶまさ)が智観寺に信吉の墓所を造営する。同じく信正が林羅山(はやしらざん)(家康に仕えた儒学者)に信吉の事跡に関する文書の作成を依頼し、その文書を刻んだ木碑(もくひ)を造立する。
→(3)埼玉県指定記念物 史跡 中山信吉墓(なかやまのぶよしはか)
→(4)埼玉県指定有形文化財 書跡・古文書 中山信吉木碑(なかやまのぶよしもくひ)
・宝永(ほうえい)3(1706)年
照守の子孫、黒田直邦(くろだなおくに)(母方の黒田氏の養子となり黒田姓を名乗る)が、祖先である中山家(照守系統)の菩提寺、能仁寺の再興を始める。
・享保(きょうほう)9(1724)年
直邦が、家勝の150回忌として家勝と家範の墓標を改めて能仁寺に建立する。
→(5)飯能市指定記念物 史跡 能仁寺中山勘解由三代(のうにんじなかやまかげゆさんだい)の墓(はか)
・享保20(1735)年ごろ
直邦の養子、直純(なおずみ)が直邦の墓を多峯主山の山頂付近に建立する。
→(6)飯能市指定記念物 史跡 黒田直邦(くろだなおくに)の墓(はか)
■中山氏・黒田氏ゆかりの文化財等地図
※地図は本紙またはPDF版をご覧ください。
▽長念寺(白子260)
黒田直邦の実弟、延貞(のぶさだ)の墓を境内に有します。
▽多峯主山(飯能地内 ほか)
黒田直邦の墓が山頂付近にあります。
▽能仁寺(飯能1329)
黒田氏代々の墓所を境内に有します。
▽諏訪八幡神社・丹生(たんしょう)神社(飯能263)
加治氏・中山氏・黒田氏にゆかりある神社です。
▽智観寺(中山520)
中山氏代々の墓所を境内に有します。
▽加治神社(中山716)
創建に中山氏が関連していると伝えられています。
▽市立図書館(山手町19–5)
飯能市郷土館特別図録『中山氏と飯能・高萩』(現在は非売品)を閲覧できます。
▽市立博物館(飯能258-1)
市内の文化財等の展示やテーマ別の特別展などを定期的に開催しています。
問い合わせ:生涯学習課
【電話】973-3681【FAX】971-2393【メール】syogai@city.hanno.lg.jp
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