◆里山を守り続けること
▽里山は人の手が入って成り立つ自然
鈴木(司会):石坂の森で活かしたい、活かすべき活用方法はありますか。清水たくさんありますが、堆肥に関してはカブトムシに使っているくらいなので、より活用できるようにしていきたいです。里山は資源を回転させるリサイクルの場所、ある意味カーボンニュートラル(※1)を実現しているような場所であると思います。
富田:作った堆肥を必要としている方が引き取れる仕組みができればもっとたくさんの活用ができますよね。
立花:私自身、薪ストーブオーナーですので、その立場から言うとナラ枯れ木(※2)の活用について考えていきたいです。
1年間の活動を通して、森の生態系や生き物たちと触れ合いながら、生態系に配慮して活用していくことが必要だと実感しています。伐倒木も朽ちていく過程で生き物の住処になります。生態系の一部として、景観を損なわない程度に伐倒木を残しておくべきであると思っています。
薪燃料は一世帯当たりワンシーズン1〜1・5トンの量を消費します。現在、伐倒木の配布事業を行っていますが、ただ配るだけになってしまい、薪ストーブオーナーの薪燃料への理解向上に繋がっていないという課題もあると思います。
また、ナラ枯れ木の伐倒や搬出に関しては若手世代や機材不足があります。町内の薪ストーブオーナーに参加してもらい、森の生態系を理解し、配慮して自身の薪ストーブライフに繋げてもらえたらいいなと思っています。
富田:30年くらい前は、ごみがたくさん捨ててあり、歩きにくい森でした。でも、野鳥の声がして、虫が飛んできて、懐かしい花が咲いていました。私は、この生き物を残しながら整備して、人が安心して歩ける森を作りたいと思いました。
生き物を調べると、希少種がいると分かり、どこまで人が入り、どこまで守るかの葛藤でした。
今まで希少種については、目録を作り、限られた形で報告していました。けれど、生き物を知るという機会が減っている今、どうして希少種になってしまったのか、どうやったら残していけるだろうかと一緒に考えてもらう時代になったのではないかと思います。
希少種の中でも数個体しかいないものは共有は難しいですが、卵をたくさん産む個体などは、どうやって次世代に残していくか、皆さんと共に考えて行きたいです。SDGsの17の目標(※3)「15陸の豊かさも守ろう」にもつながる取り組みだと考えています。
清水:里山は、人の手が入っていて成り立つ自然だと思います。それを人々は心地良いと思っているから残したいと思う。遊んで学んで心地よいという自然を作っていかなければならないと思っています。
ただ、守ることばかり考えると大変なので、必要だったり、楽しかったりする場所になると、人が集まるような里山としての独自のポジションになるのではないかと思います。
立花:皆さんがおっしゃるように、石坂の森は人の手を加えて、保全されていく森だと思っています。環境保全をすることは最適解がない問題に取り組んでいるわけですので、根気強く長い目で取り組んでいきたいです。
小峰:もし森が利活用されなかったら、木々がうっそうとして動植物もいなくなって、住宅地に動物が降りてきたり、木々がなくなることで保水力がなくなり、水害に繋がるといった場合もあります。暮らしに影響を受けると考えると、石坂の森に限らず、私たちの生活を保全していることに繋がると思いました。
人間も自然の一部として、里山と住宅地と分けるのではなく、里山を守ることは、自分の生活を守ることに繋がると気づくこと、当事者意識を持つことが必要かなと思います。
清水:当事者意識はとても重要で、何回か石坂の森に行って、「キンランを見た」などのハッとした経験がないと当事者になれないと思います。ここにごみは捨てられないなと思う体験が必要ですよね。
山谷:生活としての石坂の森を確立する前に、やらなければいけないことがたくさんありますね。まずはみんなに愛着を持ってもらう、石坂の森にただ歩きに来てもらう、そういうところから始めていく必要があるのかなと思いました。
立花:NPOに参加するまで、どこにカブトムシがいるのかとか知らなかったです。活動に参加し、森に入って「この町に来てよかったな」と思いました。森に来てもらう体験だけでも、石坂の森に対する当事者意識が持てるなって、体験してもらうことが一番重要なんだなって思いました。
山谷:そうですね。一番に伝えたいことは石坂の森に歩きに来てください!ということです。見山私たちからすると親しめる森ですけど、普通の方からすると暗くて行きづらい場所に感じているかもしれません。それも魅力の一つであると思いますけど、気楽にというと難しい部分もあるのかなと思いました。
気楽に来れるように森を整備したり、イベントを開催していきたいです。
山谷:NPOの中にいると周りの方は自然に関心がある人ばかりですから、私たちが先導して活動していきたいです。
小峰:今でこそ、NPOに入ってよかったと思っていますが、入る前はNPOが怪しいなと思っていました。(笑)
山谷:分かります!
小峰:NPOには、自然や動植物に関する知識を持つプロフェッショナルな方が多いです。けれど、我々が特殊なわけではなくて、普通の住民が活動に携わっているんだとオープンに広げていくことで、石坂の森に足を運ぶきっかけになればいいなと思います。
◆用語解説
※1 カーボンニュートラル…温室効果ガスの排出量と植林、森林管理などによる吸収量を差し引いた合計をゼロにすることを目指すこと。
※2 ナラ枯れ…ナラ類やシイ・カシ類などの樹幹にカシノナガキクイムシが潜入し、ナラ菌を樹体に感染させ、菌が増殖することで、水を吸い上げる機能を阻害して枯死させる伝染病のこと。
※3 SDGs(エスディージーズ)…「持続可能な開発目標」のことで、世界中にある環境問題・貧困・紛争・人権問題等の課題を、世界のみんなで2030年までに解決していこうという計画・17の目標のこと。
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