【脈々と受け継がれる伝統の技】
■頭師
埼玉県伝統工芸士 的場 健一(まとば けんいち)さん
「鴻巣に職人ありと知らしめたい」
ひな人形の顔を作る頭師(かしらし)の家系に生まれた的場さんは、中学校卒業後に岩槻の人形屋で5年間修行を積み、4代目として独立しました。現在では本市で唯一の頭師です。
「60年以上続けていますが、その時々の、こんな顔にしてほしいという注文に応え、作ってきました。今も皆さんに喜ばれる顔を描けるよう日々探求しています。」
ひな人形の顔は、親王様で50以上の工程があり、特に神経を使うのは筆仕事といいます。細い筆で、眉毛や髪の毛の生え際などを本物さながらに何本もの線を描きこむ技は見事です。
的場さんは人形作家としても活躍しており、木目込み人形や絵付け人形教室の開催、壊れた人形の修理も受け付けています。「この仕事が好きだから、まだまだ現役で頑張って、鴻巣に職人ありと知らしめたいですね。」と語ってくれました。
■人形師
埼玉県伝統工芸士 小野島 久美(おのじま ひさみ)さん
「こだわりは柔らかな風合いの曲線美」
人形の体を作る人形師として18年目の小野島さんは、工房で3代目となる埼玉県伝統工芸士です。
ひな人形は、顔とともに美しさの決め手となるのが振り付けです。〝振り〟とは、人形の腕を曲げたり、手元を形作ったりして、その人形の姿を完成させることです。
「毎回同じことの繰り返しですが、固い針金を曲げるには力が必要なこともあり、左右対称の振りが特に難しいです。長く続けてやっと技術を身につけることができます。また、衣装の着付けにも、時々に合った色調を取り入れるよう心掛けています。伝統を活かしつつ、柔らかな風合いをもつ曲線美を大切にしています。」目打とへらを使って絶妙な角度の振りを付ける熟練の技が光ります。
最近の住宅事情に合わせた小さめの人形が多く出るといい、「女の子のお守りとして毎年ちゃんと飾ってもらえると作る側としても嬉しいです。」と語ってくれました。
◆国指定 重要無形民俗文化財 鴻巣の赤物
赤物人形は江戸時代から魔除け・病除けとして、また、軽くて丈夫な郷土玩具として庶民に愛されてきた素朴な人形です。桐のおがくずに糊を加えて練った生地を型に入れて成形し、乾燥させた後、赤く彩色します。
この赤物製作技術は平成23年に、玩具の製作技術としては全国初となる国の重要無形民俗文化財に指定されました。
▽赤物人形職人
大塚 文武(おおつか ふみたけ)さん
昔ながらの製法で赤物を作っています。赤物は贅沢品ではなく、庶民に愛されてきた素朴な人形です。すべて手作りですので、目の位置や描き方などが違いますが、そこが赤物の良いこところだと思います。
ひな人形は皆さん馴染みがあるかと思いますが、鴻巣には赤物もあるということを知ってほしいです。
干支の赤物もありますので、市内の各家庭に毎年飾ってもらえるようになると嬉しいですね。
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