■「過活動膀胱~『トイレが近くて』困っていませんか?~」
泌尿器科部長 藤井 猛(ふじいたけし)
「トイレが近い」ことを「歳のせい」とあきらめていませんか?
頻尿、尿漏れのトラブルは、夜間何度も尿にいって眠れない、トイレが気になって外出をひかえるようになった、急に尿が漏れて恥ずかしい思いをしたなど日常生活に大きな影響を及ぼします。
過活動膀胱とは「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。
2003年に行われた調査で、40歳以上の男女の8人に1人(全体の12・4%)が、過活動膀胱の症状をもっており、年齢と共に増加することがわかりました。
◆過活動膀胱の原因
排尿筋が過剰に活動することが、過活動膀胱の原因です。脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと、それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものがあります。
・神経系のトラブル
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳障害
・非神経系のトラブル
前立腺肥大症で尿が出にくい状態が続き、膀胱が過敏に働くようになった場合
出産や加齢によって、子宮、膀胱、尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなった場合
・それ以外の原因(特発性)
◆過活動膀胱の診断
過活動膀胱の診断は、「尿意切迫感を有し、通常これに頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば伴わないこともある状態」という自覚症状のみで行われます。ただし、他の疾患(膀胱癌、膀胱炎、膀胱結石、前立腺癌など)を除外する必要があります。過活動膀胱症状質問票で、質問3の点数が2点以上、かつ全体の合計点が3点以上であれば、過活動膀胱であることが疑われます。
[過活動膀胱症状質問票]
◆過活動膀胱の治療
薬物療法と行動療法が主体になります。
行動療法には、「生活指導」、「膀胱訓練(トイレを少し我慢する)」、「理学療法」が含まれます。生活習慣の改善や、「膀胱訓練」、「骨盤底筋体操」などで、機能の弱まった膀胱や骨盤底筋を鍛えることによって、症状を軽くすることができます。
○骨盤底筋体操
尿道・肛門・腟をきゅっと締めたり、緩めたりし、これを2~3回繰り返します。これによって骨盤底筋がきたえられます。1回5分間程度から始めて、10分~20分まで、だんだん増やしていきましょう。体操は、あお向けの姿勢、四つ這いの姿勢、机を支えにした姿勢、椅子に座った姿勢など、さまざまな姿勢で行うことができます。
杵築市立山香病院ホームページ(【URL】http://yamaga-hp.jp)内の〝YouTubeチャンネル〟に骨盤底筋運動の動画がありますのでご覧ください。
○膀胱訓練(トイレをがまんする)
トイレをがまんして膀胱を広げ、安定させ、膀胱に尿をためられる状態にもどすトレーニングです。
頻尿・尿意切迫感のある人が排尿をがまんする。
骨盤低筋体操を行いながらがまんすると効果が高まる。
具体的には…
少しずつ15~60分単位でがまんする間隔を延ばしていく。
目標は2~3時間がまんできる状態。
「トイレが近い」ことを「歳のせい」とあきらめていませんか? 過活動膀胱症状質問票をチェックして、質問3の点数が2点以上、かつ全体の合計点が3点以上であれば、過活動膀胱であることが疑われます。泌尿器科に受診し、尿の悩みについてお気軽にご相談ください。
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