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山香病院だより vol.192

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大分県杵築市

■「鼠経(そけい)ヘルニア」
副院長・健診センター長 石尾 哲也(いしおてつや)

鼠径ヘルニアとは、一般に『脱腸』と呼ばれる良性の病気です。足の付け根の部分を鼠径部”と言い、成人の鼠径ヘルニアでは、その鼠径部の組織が脆弱になり、お腹の中にある腹膜が袋状に飛び出してくることにより起こります。
鼠径ヘルニアの症状には、鼠径部の不快感や痛み、立った時・お腹に力を入れた時に認める鼠径部の柔らかい膨隆などがあります。腸が飛び出て膨隆ができるため『脱腸』と呼ばれます。
鼠径ヘルニアは、高齢、男性、痩せ型、腹圧のかかる仕事や運動、鼠径ヘルニアの家族歴や既往歴があるかた、慢性的な咳や喫煙者などに多いと言われています。
通常は、指で押さえるだけで引っ込みますが、急に膨隆が硬くなり、指で押さえても引っ込まなくなることがあります。それは、ヘルニアの『嵌頓(かんとん)』と言い、脱出した腸が締め付けられ、血液が行かなくなるため、緊急の手術が必要になります。緊急手術になると腸を切除しないといけない場合もあるため、出来る限り緊急手術は避けたいものです。
ヘルニアの『嵌頓』および緊急手術を避けるためには、鼠径ヘルニアを治療することが必要です。鼠径ヘルニアは物理的な体の変化であるため、自然に改善することもなければ、お薬で改善することもありません。よって、唯一の治療は手術になります。治療せずそのままにしておけば、いつ『嵌頓』するかわかりません。爆弾をかかえたまま生活するのではなく、きちんと鼠径ヘルニアを修復して快適な日常生活を送ることが重要です。
鼠径ヘルニアの手術には様々な方法があります。以前は、自己の組織同士を縫合して補強を行う手術法が主流でしたが、過度の緊張がかかるため再発率が高く、術後の疼痛が強いために、現在では9割以上の鼠径ヘルニアの手術が緊張のかからないメッシュ(網目状・シート状の人工物)を使用する方法で行われています。さらにメッシュを使用する手術方法にも、鼠径部切開法や腹腔鏡下手術などいくつかの方法があります。
当院では、(1)術後疼痛が軽度で、仕事復帰・社会復帰が早い、(2)術後の慢性疼痛・感覚鈍麻が少ない、(3)血腫・創感染の術後合併症が少ない、など優れた点が多いため、腹腔鏡下手術を第一選択としております。鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、非常に侵襲の小さな手術であり、通常は術後数日で退院が可能です。鼠径ヘルニアの方には、ぜひ手術をお勧めします。
鼠径ヘルニアでお悩みの方は、お気軽に当院外科にご相談下さい。

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