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特集 ながたに振興協議会の竹活用の話(3)

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大分県豊後大野市

■竹が循環する やっかいものが地域にもたらしたもの
竹を伐採し竹を活用したことで、地域はどうなったのか。ながたに振興協議会の甲斐支援員に聞いた。

◇やっかいものから地域を守るために
「荒れた里山を自分たちでなんとかしようと、竹や樹木の伐採を始めた当時は、竹の活用は考えてなかったです」と話す地域支援員の甲斐さん。過疎化・高齢化により集落機能が低下し里山の管理が行き届かなくなると耕作地や住宅地周辺に竹が進出し、生活を脅かす存在となっていたやっかいものの竹。林野面積が多い長谷地域も里山保全に悩んでいました。10年前、地域内の栗ヶ畑(くりがはた)区で地域を守るため、生活環境を脅かす竹の伐採を始めました。当時は焼却処分するだけだった伐採した竹。平成27年に「ながたに振興協議会」が設立されると、竹やぶをなんとかしてほしいとの声もあり、まず取り組んだのが竹害対策でした。1自治区では里山までカバーできなかったため、協議会全体で里山整備に取り組み、処分するだけだった竹を資源として使えないか考え始めました。

◇さまざまな姿に生まれ変わるやっかいもの
平成29年、本格的に竹活用の取り組みを始めました。この年、竹チップの肥料化の実証実験を行い、良質な堆肥作りに成功。地域内の農家と協力し竹チップ有機堆肥を使用した米や野菜作りを行うなど、地元資源を循環活用する仕組みづくりを形成しました。平成30年には、市のサイクリングハブ施設内にある足湯の熱源として使う竹チップ燃料を振興協議会で供給することに。供給当初の竹チップは燃料に不向きなものがあり、悩みながらも大きさや乾燥具合を研究し、燃料に最適な竹チップにするための技術を確立。同施設の竹チップ専用ボイラーの管理も担うようになりました。「伐採直後の竹チップは水分量が多いため、燃料には不向きでした。竹チップを乾燥させるため最適な方法を探り、失敗を重ね、行きついたのがもみの乾燥機。家庭で使われなくなったもみの乾燥機を利用し、竹チップを乾燥しています。ボイラー管理も最初は慌てましたよ。チップが詰まり、異常を知らせるブザーが鳴ってもどこが詰まったのか分からない。技術が何もないところから始めました」と苦笑い。管理が難しいとされる同タイプのボイラーは、他所では壊れたところもあるそうですが、こまめに補修や清掃を行う振興協議会の努力もあり、同施設のボイラーは今も稼働しています。
令和元年度、これまでの取り組みを発展させたいと考え、次なる竹の活用方法を模索し、頭を悩ませた役員の皆さん。竹を利活用する先進地を視察し、地域内外からさまざまなアイデアを出してもらったそうです。「何もないところから始めました」と話すように、苦労を重ね、竹を活用した地域内循環システムの構築を目指す「竹活用プロジェクト」を立ち上げました。そうして、これらの取り組みやプロジェクト内容が認められ、国や県の事業に採択されたことで、必要な機材購入や施設整備を実施しました。プロジェクトの中で、試験運用を行った竹パウダーを使った「竹の酵素風呂」。商業運用は考えていなかったそうですが、大変好評であったため、令和2年4月から商業運用を始め、大ヒット。地域外からパート従業員4人の雇用も生み、地域の活性化にも貢献しています。
「旧長谷幼稚園を活用した拠点施設では、毎日人が来て施設が利用されています。事業を推進できたのは地域外の協力もあったからです。竹の酵素風呂は酵素風呂スタッフのアイデアで、地域内だけの力では思いつかなかったですよ。事業を始めてから地域外の個人や各種団体とも交流が各段に増えました」

◇地域内で生まれた好循環
竹の活用で地域にさまざまな効果が出始めています。「荒れ放題の里山がきれいになり、喜ばれました。伐採時に加勢もあり、地域ぐるみでの活動になりつつあり、地域の環境改善につながっています」と話す甲斐さん。ほかにも、事業収入で、酵素風呂のスタッフの人件費と伐採にかかる資材費を賄えており、地域住民には低料金で酵素風呂を提供することで、酵素風呂が住民の健康増進と交流の場にもなっています。「全てが賄えているわけではないので、竹伐採の作業はある程度ボランティアの精神も必要です。肉体労働なので、けっこうきついけど、現役で働いていたときとは違ったつながりができて、自治区を越えた交流も増えました。みんなで作業すると、お金では買えない充実感があるし、メンバーが時々集まり実施する慰労親睦会も作業の推進力に。さまざまな賞を受賞し注目されたことで、県内外から視察に来る人も増えて、豊後大野市の宣伝にも一役買っていますよ」と笑います。竹パウダーの発展やさまざまな竹の活用も今後考えているという振興協議会。

「竹はやっかいものであるけど、有効な資源になってきているよ」
やっかいものであった竹を、振興協議会の創意工夫で、さまざまな資源として循環させ、収益を住民や里山を守るための費用に使うことで、地域内で好循環が生まれています。放置された竹林の課題解消に取り組んだ結果、竹が長谷地域では欠かせない存在となっていました。

◆ながたに振興協議会
平成22年に地域にあった小学校が閉校し、過疎高齢化が進む犬飼町長谷地域。令和5年3月現在は高齢化率60.7%に。互いに支え合い、地域課題の解決と活性化を図るため、平成27年に旧長谷小学校区内の自治区が集まり振興協議会を設立した。竹の循環型資源化活動の取り組みが評価され、令和2年度総務省のふるさとづくり大賞で団体表彰を受賞。令和5年6月には第50回環境賞審査委員会特別賞を受賞した。

「少子高齢化をなんとか食い止め、今の住民たちが幸せに暮らせるようにしたい。その活動を振興協議会が担っています。」
赤峰映洋会長

里山を脅かすやっかいもの今では有効な資源となり地域に欠かせない人気者に
[長谷地域の好循環]
・竹伐採で里山保全
・竹の活用
・地域や資材費に還元
[地域外]
・視察や利用者の増加

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