■大分県水平社設立から100年 差別をなくす仲間づくりを
人権は、誰もが生まれながらに持っている幸せに生きるための権利であり、生命や自由、平等を保障し、私たち一人ひとりの日常生活を根幹から支えている大切なものです。今年は「大分県水平社」設立から100年になります。改めて、私たちにとって大切な人権について考えてみましょう。
◇社会を変えるのは私たち
明治4(1871)年に政府は「解放令」を出しました。被差別部落の人々は、「解放令」によって平民とされ、法律の上では平等になりましたが、政府は、部落差別をなくすための積極的な施策や教育・啓発を行わなかったため、実際には職業、結婚、住む場所などの面で差別は根強く残されてきました。
大正時代になり、人々の人権確立への目覚めが、自由や平等を求める運動として勢いを増す中、厳しい差別に苦しみ、耐えることを強いられてきた被差別部落の人々は、差別からの解放を求める運動を進めていきました。そして、大正11(1922)年3月3日、京都で「全国水平社」が結成され、その創立大会で読み上げられたのが「水平社宣言」です。日本で初めての人権宣言と言われ、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ぶ宣言は、人間を尊敬することによって、あらゆる差別をなくそうとするものでした。大正12(1923)年には「全九州水平社」が設立され、大正13(1924)年3月30日に「大分県水平社」が設立されました。
大分県水平社が設立されて、今年で100年。100年経っても残念ながら差別は残っています。また、社会情勢の変化に伴い、インターネットやSNS上での誹謗(ひぼう)・中傷、ヘイトスピーチ、性的少数者や障がい者への偏見、新型コロナウイルス感染者への差別的な扱いなど、新たな差別も起きています。
この社会を変えていくのは私たちです。差別の現実に向き合うとともに、常に正しい知識を学び、人権感覚を養う中で「差別をしない」「差別を許さない」仲間づくりを進める必要があります。全ての人々の人権を尊重し、明るい社会を築くための行動が私たち一人ひとりに求められているのです。
◇差別をなくす仲間づくりを
12月の「人権を守る市民のつどい」講演会で熱演いただいた人権バンド「イソジンズW.L.C」の森山さん・猪股さんのお言葉を一部紹介します。
「私たちは人として生まれて、みんな幸せになるために生きています。当たり前のことです。余計なことはそこにある差別やいじめです。それを一つ一つなくしていくことが私たちの大事なことです」「同和教育や人権教育は、自分の家族やふるさとを振り返って、家族の絆を確かめ合うもの。自信を持って胸を張って生き、すてきで豊かな生活にする、そんな自分のためのものです」「言いたくなかったことは、差別があるから言いたくないだけで、本当は一番分かってほしいこと。社会に差別がなければ言えること。自分のことを知ってほしい、相手のことを知りたい、それがつながるということです」「私(森山)と猪股さんの関係を見てきたうちの息子は小1のときに『猪股さん、仲間やろ。仲間は差別せんたい。いじめをなくすたい』『うちの部落は仲間をつくる部落たい』『うちみたいな部落が日本中に広がれば、差別やいじめはなくなるばい』と言いました。小1の息子が教えてくれたこの仲間づくりを今もずっと信念を持って続けています。こんな仲間がいるから僕らは前に進めます。皆さんの近くにいる子どもたちにもおそらく皆さんの愛情が届いて、仲間がいて、毎日前に進んでいるのだと思います。そんな仲間の輪を広げていけば、今残念ながら差別するしかない苦しい生き方をしている人も、いつか心を開いて僕らの仲間の輪に入ってきてくれると思います。あきらめたら終わりです。あきらめなければできます」
お互いを大切にして、差別をなくす仲間づくりを進めましょう。
◆明るい社会を築くための行動例
・人権研修や人権講演会などに参加する
・人権講演会や研修会を自分の所属する集団の中で行う
・日常の中で誤った偏見から差別をしたり、人を傷つけたりしていないか自分に問いかける
・家族や友だちと語り合う
・困っている人の話を聴く
・偏見を持っている人に正しく伝えるなど
部落差別問題とは、特定の地域出身であることや、そこに住んでいることを理由に、社会生活の中でさまざまな差別を受けるという日本固有の人権問題です。昔からの間違ったうわさ話や偏見による許しがたい人権問題であって、これは差別をする側の問題です。
問い合わせ先:人権・部落差別解消推進課 人権・部落差別解消推進係
【電話】0974-22-1152(内線2492)
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