市長が初春文楽公演を控えた国立文楽劇場を訪れ人間国宝の認定や文楽との出会い八尾市の芸術文化の取組みについて語り合いました。
・人形浄瑠璃文楽 人形遣い
吉田 玉男
平成二十六年八尾市文化賞
令和五年八尾市文化特別賞
人間国宝
・八尾市長
大松 桂右
■略歴
昭和28年 八尾市生まれ
昭和43年 初代吉田玉男(たまお)に入門、吉田玉女(たまめ)と名乗る
昭和44年に朝日座で初舞台を踏んで以降、人形浄瑠璃文楽の人形遣いとして研鑽(けんさん)を重ね、平成4年の大阪府民劇場賞奨励賞をはじめとして、さまざまな賞を受賞
平成26年 八尾市文化賞受賞
平成27年 二代目吉田玉男襲名
令和2年 紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章
令和5年 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される
同年 八尾市文化特別賞受賞
■人形浄瑠璃文楽とは?
人形浄瑠璃文楽は、日本を代表する伝統芸能の一つで、平成20年にユネスコにより「無形文化遺産」として登録されました。
情景や台詞を語る太夫(たゆう)・音色で心情を表現する三味線・三人一組で操る人形が一体となって物語を演じる総合芸術です。一体を三人の人形遣いが操る文楽の人形は世界に例を見ないもので、微妙な動きはもちろん、心情までも表現し、生身の人間以上に訴えかけるものをもっています。
人形の大きさは120cmから150cm程度で、衣装や小道具をつけると、10kg近くになるものもあります。
人形には立役(たちやく)(男性役)と女方(おんながた)(女性役)があり、吉田玉男さんは歴史物に登場する武士のような、大きく勇壮な立役を得意とされています。
◇人間国宝の認定に驚きと喜び
市長:このたびの人間国宝への認定おめでとうございます。
玉男:ありがとうございます。子どものころから八尾で生まれ育ち、55年間修行し、人間国宝にも認定いただいて。市長にもお越しいただき、ありがたいことです。
市長:11月の文楽公演を鑑賞させていただき、素晴らしい技芸に見入りました。人間国宝の認定は、どのように連絡があったのですか?
玉男:その時は東京におり、文化庁から携帯電話へ連絡がありました。令和2年に紫綬褒章を受章したときの写真撮影がコロナ禍でできておらず、その撮影の連絡かと思っていたら、認定の連絡で本当に驚きました。出先からの帰り道、地に足が着いていないような心地になりました。
これからも初心にかえって、ひとつひとつ大事に精進したいです。
◇文楽との出会いは中学2年
市長:文楽との初めての出会いはいつごろですか?
玉男:中学2年生の時です。僕が住んでいたご近所に人形遣いの方がおられて。その人に「遊びに来ない?」と声をかけていただいて行ったのが道頓堀の朝日座でした。織田信長や豊臣秀吉が登場する「絵本太功記(えほんたいこうき)」という歴史物のお芝居を初めて観たのが文楽との出会いでしたね。
市長:観てどう感じられましたか?
玉男:太夫・三味線・人形。三つの役割が一つになって文楽をやっていて、面白い芝居やなって。さっそく先代の玉男師匠の部屋に呼ばれて。そこですぐに、学生ズボンのまま黒衣を着せてもらって頭巾をかぶってね。人形の出る舞台横の幕を開けたり、舞台に出る師匠の楽屋草履を受け取ったり、細かい簡単な仕事をしていました。舞台横から見ると、お客さんがいて、お芝居をやっていて……驚くような輝く光景でしたね。
授業が終わった後、近鉄八尾駅から市電やバスで日本橋へ通って、そういうのを2年くらい続けていました。そうこうするうちに卒業後の進路を考える時期になり、両親も進学を勧めましたが、僕は文楽が面白いと思って、正式に先代玉男師匠に弟子入りをしました。
市長:文楽は楽しいと感じたのがきっかけで入門されたのですか?
玉男:楽しいと思いましたね。子どもだったので、遊びのような気持ちもあって。入門すると師匠は厳しかったです。先代は86歳の最後の公演まで務められて、その隣で長く修行させてもらったのは本当にいい経験でした。
◇芸術文化の力を広げたい
市長:八尾市は芸術文化基本条例を制定し、その一つとして「やおうえるかむコモンズ」という取組みを始めました。プロもアマチュアも関係なく、芸術文化活動をされている方に交流していただき、小さな子どもから高齢者まで、気軽に芸術文化に触れるきっかけを作っています。小規模特認校制度など特色のある教育活動も展開しており、玉男さんの磨き抜かれた芸のような芸術文化に、子どものときから触れ、体験してもらう。先ほどの玉男さんの話のように、興味を持ち、こういう世界があるんだと気付いてもらう。そういうことができればと思っています。ぜひ玉男さんの力もお借りしたい。
玉男:それは僕もやってみたいですね。ぜひ協力させていただきたいし、弟子たちもそういう方面で協力ができればうれしいことです。文楽では研修生制度があります。中学や高校を卒業した後で文楽の世界に入ることもできます。毎年6月には学生向けの鑑賞教室を開いたりしていますので、そういうことからも文楽について知ってもらえればと思います。
市長:来年には大阪・関西万博が開催され、八尾市は自治体で唯一、大阪ヘルスケアパビリオンに出展が決まっています。八尾のものづくりの力や八尾市の持つ魅力を日本だけでなく全世界に発信したいと考えています。
玉男:近鉄八尾駅にものづくりの展示スペースができていて驚きました。文楽は世界に誇る日本の伝統文化ですから、万博という大きな機会に海外から来られる方にも見てもらいたいと思います。3人で人形を遣うというのは文楽独特のもので、置いてある人形も人が持つと魂が入る。日本の伝統芸能を守り、演じていく、そのための修行は大変なことなのですが、どのような仕事でも同じだと思います。若い人にも希望も持って、伝統芸能を観ていただきたいと思っています。
市長:ご協力よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
※詳しくは本紙またはPDF版をご覧ください。
問合せ:文化・スポーツ振興課
【電話】924-3909【FAX】924-3788
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