■遊びのすがた〜工芸と絵画で見る玩具の美術〜
期間:11.17日まで
和泉市久保惣記念美術館では、特別展として玩具をテーマにした展覧会を行います。
江戸時代の作品を中心に、玩具や玩具で遊びに興じる人たちを描いた絵画を陳列します。
囲碁、かるた、人形など今もなじみのある遊びの道具をはじめ、貝を使った合貝(あわせがい)のような今ではあまり遊ばなくなったものまで、様ざまな玩具をご覧いただけます。単なる玩具というだけでなく、大名家などで使用されたものには贅沢な装飾が施された、美術工芸品として美しいものが作られており、当時の工芸品の優れた技巧を見ることができます。また、双六(すごろく)やかるたで遊ぶ男女、玩具で遊ぶ子どもなどを描いた絵画や浮世絵を工芸作品とともに陳列します。くつろいで遊びを楽しむ人、楽しげに笑う人、遊びに興じる人たちの表情からは、当時の絵師たちの人物描写の力量が味わえます。本展覧会では、近代以前の遊びの文化について親しんでいただきながら、工芸と絵画それぞれの巧みさや美の魅力をお楽しみください。
◇うんすんかるた
江戸時代 滴翠(てきすい)美術館蔵
16世紀後期にヨーロッパから伝わったカードゲームが日本で変化して生まれたもので、西洋風なデザインと日本風なデザインが共存しています。5種類のマークが各15枚、全75枚のセットで、絵柄を揃えるなどの遊び方がありました。
◇三つ折人形 犬千代丸(いぬちよまる)
江戸時代 大阪歴史博物館蔵
高さが約70センチある大型の男の子の人形です。腰、膝、足首などが可動し、着せ替えたり座らせたりできます。木製で、表面には胡粉(ごふん)という貝から作った白色の素材を塗り、磨いて光沢を出し、真っ白な肌を表現しています。
◇黒漆塗笹唐草蒔絵碁盤(くろうるしぬりささからくさまきえごばん)
江戸時代 彦根城博物館蔵
江戸時代末の彦根藩主であった14代井伊直憲(なおのり)に有栖川宮家(ありすがわのみやけ)の宜子(よしこ)が嫁いだ際の婚礼道具に含まれていた碁盤です。黒漆地に金蒔絵で笹唐草文と有栖川宮家の家紋が描かれています。大名家の調度品の豪華さが偲ばれる作品です。
◇左義長(さぎちょう)羽子板
江戸時代 サントリー美術館蔵
美しく彩色された羽子板で、実際に遊びに使うものというよりは正月の縁起物として作られています。新年に使用する羽子板にふさわしく、宮廷で行われた正月行事の左義長という祭りを描いています。
源頼光公館土蜘蛛作妖怪図(みなもとよりみつこうやかたつちぐもようかいをなすず) 歌川国芳(うたがわくによし)筆
江戸時代後期 和泉市久保惣記念美術館蔵
平安時代の武将である源頼光とその配下の武将たちが妖怪がいるのも気にせず囲碁をうつ様子が描かれています。この作品は背後の妖怪が天保の改革に苦しむ庶民で、前面の武将が幕府の役人を意図し、改革を批判しているとも言われています。
◇蹴鞠寿老図(けまりじゅろうず) 曾我蕭白(そがしょうはく)筆
江戸時代中期 京都国立博物館蔵
七福神のひとりに数えられ長い頭が特徴的な寿老人が蹴鞠をしています。蕭白は頭の長さを強調するために背中側から描いています。毬を黒く描き、頭の周りも濃い墨を用いることで頭の白さが強調されています。
◇凧あげ図 仙厓義梵(せんがいぎぼん)筆
江戸時代後期 福岡市美術館蔵
三頭身で描かれる子どもが凧あげをしています。凧、子どもの頭と口が同じような形で描かれていて絵にまとまりを感じさせます。腕や足も太く描かれていて子どものふくよかさを描いています。
◇打毬図(だきゅうず)
室町時代 東京国立博物館蔵
打毬はヨーロッパで盛んに行われるポロという競技と共通するもので、馬に乗る場合と乗らない場合があります。この絵は徒打毬(かちだきゅう)とも呼ばれる馬を使わない打毬を描いています。
◇異代同戯図巻(いだいどうぎずかん) 狩野昌運(かのうしょううん)筆
江戸時代前期 國學院(こくがくいん)大學図書館蔵
皇帝の夢の中に現れて病を起こす鬼を退治した鍾馗(しょうき)と三途の川で死者の衣服を奪い取る老婆の鬼である奪衣婆(だつえば)が双六をしています。退治する者と退治される者が仲良く遊ぶ姿は微笑ましく感じます。
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