ライフステージや職場の変化に伴い、それぞれの悩みや考え方、そして求める働きやすさも変わります。今回、キャリアやライフステージの異なる女性の皆さんに、自身の経験を踏まえ、自分らしい働き方とは何かを考えてもらいました。
・ファシリテーター 江成道子さん
日本シングルマザー支援協会代表理事。女性がキャリアを持たないことに危機感を抱き、子育てと仕事が両立しやすい社会をめざして活動。
・柴絵利香さん
大阪公立大学大学院工学研究科1年生。海洋ごみ問題への関心から、大学の卒業研究では光触媒を活用した浄水技術をテーマに選択。「観濠クルーズSakai」などの地域活動にも参加。
・矢倉瞳さん
日電商会勤務。20代後半は身内の介護に従事。さかいJOBステーションを活用し、社会復帰を果たす。同社初となる女性の営業職として採用される。
・畑野友里さん
堺市職員(子どもの未来応援室主査)。育休復帰2年目。ファミリーサポートセンターや病児保育などの社会資源を活用して、育児と仕事の両立に奮闘中。
・東谷麗子さん
三天被服代表。創業以来、女性の意見を反映した作業服やフェムテック商品を企画・製造。シングルマザー。さかい「働コミ」Companyに登録。
■職場の内から外から女性の働きやすさを考える
矢倉:私は周囲が結婚や出産、仕事での成長などのライフイベントを経験している時期に身内の介護に専念していたので、変わらない自分の環境に焦りを感じていました。社会復帰後も、年齢と社会人としての経験値ギャップや、また社内初の女性営業ということで不安や戸惑いはありました。でも女性目線の意見を聞いてくれる職場だったので、積極的に発信していこうと思えました。
畑野:2歳になる息子がいるのですが、昨年は体調を崩すことが多く、家族と予定を調整して交代で看病したり、病児保育を利用したりしました。それでも急な欠勤や早退が重なり、周囲に負担を掛けているように感じたこともあります。お互い様だと言って受け入れてくれる職場なので、仕事と育児を両立できるように毎日奮闘しています。
東谷:職種や企業規模によっては人手不足で、なかなか周囲を頼りにくいという声も聞きます。正社員からパートに変更したり、仕事を辞めないといけない人も多いですよね。
柴:私の母も育児のために仕事を辞めて、現在はパート勤務です。以前は証券会社でトップセールスを誇っていたそうで、せっかくのキャリアがもったいないと思いました。そんな母への憧れもあって、好きなことを研究しようと、工学部に進学しました。
江成:スキルや意欲のある女性が社会復帰できずに埋もれてしまうのは、大きな損失ですね。女性の少ない理系の学部で困り事はありますか。
柴:理系は男性が多いので、大学でも将来の就職先でも、自分の意見を話しやすい環境かどうかが心配です。あと、研究時に着る作業服が男性用に作られているため、私たちには大きすぎて動きにくいので、ストレスになることがあります。
東谷:製造業などの現場でも、女性向けの作業服を採用している企業は少ないんです。そもそも現場に女性が少ないので、「女性の働きにくさ」が表面化していないという問題があります。私は女性用作業服の製作過程で、実際にその企業で働く方々にヒアリングするのですが、そこで初めて女性社員が直面する課題に気付く企業も多いです。作業服をきっかけに、女性が活躍しやすい職場を提案していきたいですね。
江成:矢倉さんのように社内から声を上げていくこと、東谷さんのように外部から提案していくこと。女性が働きやすい職場にするには、その両方が必要なんですね。
■経験を言語化し、ブランクもキャリアに
江成:介護や育児で離職・休職している期間は「ブランク」と見なされがちですが、介護や育児を通して身に付いたスキルはありませんか。
矢倉:介護は、人によって必要な支援が異なりますし、日によっては症状も変わります。その時々で臨機応変に対応する必要があるので、柔軟性や適応力が身に付きました。
畑野:息子が絶賛「イヤイヤ期」なので、忍耐力は養われました。育児はマルチタスクなので、時間管理スキルや集中力も高まったと思います。
江成:私たちはその素晴らしい経験を言語化することで、職務経歴と同等の価値を示していきたいですね。そしてその価値をしっかりと評価できる社会をめざしたいですね。
柴:今日、皆さんのお話を聞いて、「いろいろな働き方があっていいんだな」「私たちは女性の新しい働き方を「当たり前」にしていく世代なんだな」と感じました。ステレオタイプに縛られることなく、自分らしい働き方を考えていきたいと思います。
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