■変わらない情熱と探求心 卓越した技で個性をアピール
ギター製作家
山本 宣哉(やまもと のぶや)さん(51歳)
すべて手作りで仕上げるギタービルダーという職業を知ったのは大学生のときでした。弾くことより製作に興味を持ち、自身の名前を付けたブランドでアコースティックギターの工房を構えて20年を超えました。
◇専門誌の記事が転機に 渡米し製作技術学ぶ
ビルダーを志したのは、アメリカの有名なギター製作学校で勉強し独立した日本人の記事を読んだのがきっかけでした。「自分も!」と一念発起。名古屋市内の大学を卒業すると、英会話を学びながらアルバイトで学費を稼ぎ、1年後に渡米しました。朝9時から夜7時の授業は実地の作業が中心。留学した5か月間にアコースティックギターとエレキギターを一から組み立てて技術を習得しました。
帰国後、長野のクラシックギター工房に2年ほど弟子入り。ノミやカンナの研ぎ方や使い方、効率のいい作業のやり方を身に付けました。
◇NOBブランドで独立 知人が最初の顧客に
28歳のときに自宅がある愛知県岡崎市に戻り、「NOB ACOUSTIC GUITARS(ノブアコースティックギターズ)」のブランドでギター工房を開設。最初の顧客は地元でバンド活動をしていた知人でした。「そんなにポンポン売れるものではありませんが、自分が製作したギターを評価し買ってくれたのがうれしかった」と振り返ります。
さらにこの知人に大阪の楽器店を紹介してもらい、販路を開拓。卓越した技術と丁寧な仕上げでファンを増やしていきました。
◇「僕のものと分かるギターを」装飾で個性をアピール
すべての工程を一人でこなし、1本のギターを仕上げるのに約3か月。年間数本というペースですが、当初からのこだわりの一つがサウンドホールの周りなどに施す装飾でした。「僕のものと分かるギターを作りたい」と、独自のデザインにカットした貝細工を本体にはめ込む緻密な技法で個性をアピールしました。
目に見えないところにも注力しました。空洞になっている本体正面の表板は2.8~3mmという薄さ。ゆがみが出ないように「力木(ちからぎ)」という棒状の木を内側に貼って補強しますが、「音にも影響し、力木の数や組み方を変えて響き方を探ってきました」。
◇培った技術を修理にも 「絶好の機会」製作に生かす
これまで培った技術は修理にも生きています。「触るのも怖くなるような古い名品を預かることもあり、いろいろな製品を見ることができる絶好の機会。部品の寸法や板の厚みなどを自分の目で確認でき、実際の製作にすごく参考になっています」。10年前からウクレレも製作。独立して23年になる今も楽器への情熱と探求心は変わりません。
◆私とふるさと
当時、自宅は美井元町にあり、成田幼稚園から市立第五小学校に入学しました。私は第2次ベビーブームの世代で、1学年10クラス近くあったと思います。
1年生の9月、曾祖父が暮らしていた岡崎市に引っ越しました。数年前、私が生まれたときのお宮参りで縁がある友呂岐神社と成田山不動尊を母親と訪問。幼少期ながらも当時の風景の記憶が思い出され、懐かしかったです。
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