◆六〇代から輝いて生きる
〈今日の映像を観て、「自分の人生一度きりやし、やりたいことをたくさん見つけてやろう!」と思いました。何歳になっても、常に何事においても好奇心を持って自分から学びを見つけて、楽しんでいきたいなと強く思いました。〉
今回のタイトルとした「六〇代から輝いて生きる」という映像を観た学生の感想である。この感想は二〇一九年一二月のものだが、今回再びこの映像を取り上げて授業を組み立てようと考えている。
新聞報道によると、全国的に教員の志願者の減少が続き、大阪府においても、把握できた範囲で過去最低となったという。教員養成大学の一員として、教職の魅力をどう伝えようかと考えているときに浮かんだのが、この映像を観た学生たちのまなざしだった。学校教育や児童生徒の現状や課題を理解するというアプローチだけでなく、どのように生きるかという人権教育の視点が、なくてはならないと思ったのである。
この映像を制作したのは、「あかね工房」のエンドウノリコさんで、これまでハラスメント、DV、性暴力被害にあった女性たちの声を届けてこられた。今回は、六〇代以上の女性六人を取り上げ、「人生を切り開く女性たち」をテーマに三〇分の作品に仕上げている。
六人の登場人物は、それぞれの輝きをもってインタビューに答えていく。ろう者が作る手話歌を学び、高校で手話歌を教えたり、高齢者施設やイベントなどで手話歌のボランティアをしているNさん。自宅を解放して文庫活動を行い、大人も子供もホッとできる場を作り、絵本の読み聞かせを行っているIさん。地域の博物館で研修を受け、その後ガイドボランティアとして活躍するSさん。
七〇歳で画廊を始め、若い人たちにも展示してもらうことにした画家のKさん。六九歳の時に夫がなくなり、できる仕事を探して介護職に出会ったヘルパーのSさん。DVの被害者から個人的に相談されたことがきっかけになり、DV支援やシェルターを運営しているMさん。
授業は、登場人物の印象的な言葉をメモしながら映像を視聴し、その後グループで語り会うという展開となった。ある学生はこうふり返った。〈今日の講義では、六〇歳以上の方たちの生の映像をとおして深く考えることができた。私の家族や周りには後期高齢者が多く、「もう終活じゃ」と暗い意見を言う人が多いため、いつも心が苦しかった。しかし、今日のビデオの人たちは未来に夢があり、とても素敵だった。〉
学生たちは、コロナ禍の厳しい状況の中で学んできた。だからこそ、素敵な生き方との出会いが、自分自身の素敵さにつながっていく、そんな授業を提供したい。
岡田耕治(大阪教育大学)
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