■人権教育のリーダー
小学校では、「自分も人も大切にできるつながりづくり」というテーマと、「人権学習を自分ごとととらえて、主体的に行動できる態度を育てる」という2つのテーマが出された。中学校は、「安心して自己表現ができる環境作り」、高等学校は、「LGBTQ+をはじめ、個々の違いについて理解する集団づくり」というテーマだった。これを小学校から順に並べると、「自分を大切にし、他者を大切にするための主体的な行動ができるように、安心して自分を表現でき、それぞれのちがいを認め合える集団づくりを行う」という一つの文が出来上がる。小・中・高の発達段階をつらぬく人権教育のイメージである。
私は、毎年滋賀県教育委員会が主催する「人権教育ミドルリーダー養成講座」に関わっている。この養成講座は、滋賀県内の小学校・中学校・県立学校の教員が六〇名ほど受講し、七月・八月・十一月にそれぞれ丸一日、合計三日間実施される。講座の目的は、教育現場での世代交代が進む中、人権教育推進の中心となるリーダーを養成し、学校全体の実践的指導力の向上を図ることである。三日間のうち、私は八月と十一月の二日間、グループでの活動の指導・助言を行っている。
六〇人の教員は、七月から四、五人のグループに分かれて、それぞれの学校の現状を出し合い、取り組みたいテーマを設定する。続いて八月に、実際に人権教育に関する効果的な指導方法について話し合い、各学校で共通して取り組む実践内容を練り上げていく。そして、実際に実践した結果を十一月に持ち寄り、効果検証しながら全体発表を行うという、中身の濃い養成講座である。私が担当するのは、十三グループの内の四グループで、小学校が二グループ、中学校・県立学校がそれぞれ一グループだった。冒頭に紹介したのは、この四つのグループのテーマである。
大阪府内の学校を訪ねても、ずいぶん若い教職員が増えた。今学校現場では、学校の中心となって、学校全体を見渡しながら、チームとして人権教育を推進する、そのようなミドルリーダーが求められている。この滋賀県の養成講座の取り組みは、一回の研修で人権教育の大切さを伝えるだけでなく、参加者がそれぞれの課題から出発したテーマを設定し、実践してブラッシュアップする過程そのものが学びとなるという、他府県のモデルになる講座である。学習指導要領では、子どもたちの「主体的、対話的で深い学び」が強調されているが、それを指導する教職員がこのような学びの中で、主体的・対話的に学んでいることが心強い。
さて、十一月にそれぞれのテーマと取り組み内容に基づき、どのような実践が持ち寄られるのか、次に先生方にお会いするのがたのしみである。
大阪教育大学 岡田耕治
<この記事についてアンケートにご協力ください。>