■子どもの意見を聞くとは
私のまわりでは、いま、NHKの朝のドラマにはまっている人が多いのですが、ドラマを通じて憲法や法律に興味がわいてきた人も多いようです。また、「こども基本法」が施行されて、これまでよりももっと「こどもの権利」とか「こどもの意見表明」「子どもの最善の利益」といったように、人権や権利というものへの意識が高まっていると思います。「こども基本法」ができた背景には、国際人権条約である「子どもの権利条約」の存在があります。日本は、もう30年も前、1994年に批准した条約なのですが、「こども基本法」をきっかけに、この条約をはじめて知った方もいるのではないでしょうか。
ところで、子どもの権利が大事だ、子どもの意見を聞くことが大事だ、ということはわかっても、「じゃあ、どうやってそれを保障したらいいの?」という問題が出てきます。「子どもの意見表明権」をどう守るのかを例に考えてみましょう。
ある講演で、スクールソーシャルワーカーの森本智美さんは、子どもの意見を聞くということは子どもがぽつりとつぶやいた言葉を逃さないこと、子どもと対話を続けることだとおっしゃっていました。つまり、子どもに「さあ、意見を言いなさい!」「どうぞ!」と促して、子どもが「こうしてほしいです!」と述べるというようなものではないのです。
毎日の生活を過ごす中で、「嫌やな」「うれしいな」といった子どものつぶやきを聞くかもしれません。それが意見表明なのです。言葉ですらないことさえあります。すこし悲しそうな表情をしていたり、赤ちゃんであれば泣くことも意見表明です。
そして、そういったささやかな「意見」を見逃さずにすくいあげて、さらに深く聞いていくのは、まわりの大人の仕事です。しかも、そのようなささやかな合図に気づくためには、日頃から、子どもをよく観察している必要があると思います。つまり、「子どもの意見表明権」の保障というのは、日常的に子どもと向き合うということなのです。
『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』(長瀬正子著、momoイラスト、ひだまり舎2021)は、絵本を読んだり塗り絵をして遊んだりするなかで、さりげなく子どものぽつりを出してもらうための本です。「本当はだれかにききたいことがある?」「好きな食べ物は何?ごはんのことでこまったことはある?」「いっしょにいたいと思う人、はなれたくない人はだれ?」といった問いかけから、子どもとゆっくり対話をしていきます。子どものぽつりを逃さないために、こういったツールの力を借りるのもよい方法ではないでしょうか。
齋藤直子
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